知っておくべき時計の誤差【連載】

第8回:

さて、時計の進化の歴史とは、まさに精度誤差との戦いでした。振り子の原理を時計に採用することができた時、1日の精度誤差は初めて10分ほどに縮まったとされています。さらに100年過ぎた18世紀には、1日2秒の高精度時計が実現するまでに至りました。今日の中価格帯における機械式時計が、1日30秒くらいの誤差ですから、200年以上前とは言え、極めて画期的な計時装置(=時計)でした。

 

 

10 greatest British inventions: From television to railway steam locomotive | Daily Mail Online

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イギリスの10大発明にも選ばれたのが、JOHN HARRISON (1693-1776)氏の発明した、航海時計である。上掲写真は初期のもの。66歳(1759年)で完成させた第四世代(H4、下記リンク参照)でようやく懐中時計のデザインとなったが、最初のモデルは写真のようなモンスターのような装置だった(1735年)。ちなみに、イギリスの10大発明には、他に、蒸気機関やねじ旋盤などが挙げられている。

 

matome.naver.jp

 

 

 

序文

時計と時間についてのお話:連載にあたっての序文 - 夜明け前の…

第1回

腕時計は、「やっぱりスイス」なのか【連載】 - 夜明け前の…

(略)

第6回

時計はなぜ時間を伝えられるのか(文字盤や針)【連載】 - 夜明け前の…

第7回 

時計の多機能って何のこと【連載】 - 夜明け前の…

 

 

さて、正確さでは機械式を圧倒するクォーツ式時計ですが、一般的には1日1秒以下です。たとえ最高峰の精度を示す機械式であったとしても勝負になりません。売り手と買い手は、この違いを十分に知る必要があります。クォーツ式が利用する水晶は、その他電子機器にも採用されており、携帯電話の時刻表示も機械式時計よりは正確です。ちなみに、時間精度を探求する試みは、今もなお続けられています。他の原子を見出し、その固有の振動数を利用するのです。たとえば、すでに販売されている電波時計は、原子(セシウム)が1秒に90億回以上振動する原理を用います。10万年に1秒の誤差です。また、直近の研究成果では、別の原子(ストロンチウム)を用い、160億年に1秒の誤差を達成しています。ここまでくると、宇宙誕生から今日までが130億年と言われていますので、「究極の時計」です。

 

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話を戻しますが、精度に難のある機械式時計でも、実は相変わらずの人気を誇っています。高精度なクォーツ式時計に慣れてしまっている今日の消費者は、必ずしもこれを正しく理解していないので注意してください。機械式における理論上の精度は、その調速機(テンプ)の振動数で決まります。機械式時計の場合、毎時21600回、もしくは28800回などの振動をすることで、時計の正確なリズムを作ります。これは、馴染みのある単位に置き換えると、1秒間に3回(=3ヘルツ)や4回(=4ヘルツ)振っていることになります。クォーツ式時計の水晶の振動数は1秒間で32768回なので、繰り返しになりますが、両者の差は歴然です。

 

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さらに、機械式時計には厄介な課題が二つあります。ひとつ目は姿勢差です。人の腕は、日々の生活の中でそれこそ色々な姿勢をしますが、これは腕時計が、特に中身のテンプが、様々な方向の重力にさらされるからです。テンプとは、ばねですから、重力を受けるとその方向に伸びてしまい、正常な伸縮が難しくなります。問題の個体があれば、テンプ等の調整作業が必要になるでしょう。ふたつ目の課題は巻き上げ状態です。今日の機械式時計の大半が、自動巻きなので、身につける人の運動量によっては、巻き上げ不足になります。その場合、使用者が手でばねを巻き上げねばなりません。狂いやすく、手間がかかる、それでも人気がある機械式時計は、工芸品としての魅力が評価されているようです。

 

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 次回

時計はメンテナンスによって、何年でも使える【連載】 - 夜明け前の…