時計はメンテナンスによって、何年でも使える【連載】

第9回:

時計の販売数量は、デジタルに比べ、アナログ(指針)時計が圧倒的に多くなります。動作原理が、クォーツ式であれ、機械式であれ、直感的な時間判断のできるアナログの表示方式は好まれているのです。言うまでもなく、針が動くのは、文字盤(表示部)の裏で歯車が回っているからです。その歯車とは、代表的な機械部品です。摩耗したり、錆びたり、汚れが付着したり、位置がずれたりと経時的な劣化は避けられません。ゆえに、故障や不良もありえます。

 

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古代ギリシアで制作されたと考えられている、世界最古の演算装置;それがアンティキティラ島沖合の沈没船から発見された機械だ。演算装置とはつまり、今日で言うコンピューターである。腐食し石化の進んだ81の部品の解明が進み、これは、天体、特に太陽と月および惑星の運行を追跡するために設計された機械であることが判明した。多数の歯車を使い、歯の数を増やし、差動装置を加えていたその技術力は、2000年という隔たりを省いたとしても見事なものだ。歯車という発明が、こうして組み合わされ、様々な発明を生み出した。その偉大さはのちに、時計へと継承されていく。

 

 

序文

時計と時間についてのお話:連載にあたっての序文 - 夜明け前の…

第1回

腕時計は、「やっぱりスイス」なのか【連載】 - 夜明け前の…

(略)

第7回

時計の多機能って何のこと【連載】 - 夜明け前の…

第8回

知っておくべき時計の誤差【連載】 - 夜明け前の…

 

 

たとえば、服を着る人は、定期的にクリーニングをするでしょう。車をお持ちの方は、車両点検を行うはずです。腕時計も同様です。毎日手にしていれば、汗や汚れにまみえたり、激しい運動にさらされたりします。機械であるがゆえに、壊れることもあるでしょう。日常的なケアや、専門家によるオーバーホールは不可欠です。これらを総称して、時計のメンテナンスと呼びます。将来の故障や不良を回避するために、時計を理想的な状態に戻すことがその目的です。

 

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時計のケースやバンドは、布やブラシ等で汚れを取り除きます。こうしたケアの頻度は、各自の使い方によります。また、時計の内部を洗浄する場合は、専門技能をもった人に任せます。内部は、購入先か、ブランドのサービスショップ、あるいは信頼できる町の時計屋さんに頼むことができます。専門家は、時計の裏蓋を開け、中身のムーブメントをすべて分解します。そして、摩耗等によって生じた金属カスや異物を取り除き、専用の洗浄液に浸します。最近は、超音波を用いた洗浄器を使うのが一般的です。洗浄後、ムーブメント及び時計を組み立てるのですが、交換せざるを得ない部品は、別途費用がかかります。さらに、各部位に合わせた粘度の油を指し、完成させ、最後に、測定器を使いながら微調整を行います。万一、外装部品に傷があった場合は、これも別途費用にて研磨をかけてもらうことができます。

 

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時計が使用される環境は、過酷なものです。たとえば、腕にされた時計には、無人ロケットを越える衝撃加速度がかかることもあります。手洗いなどで水にさらされることもあります。また、時計の文字盤を眺めてみると、中央から長く伸び出した時計の針の形態が、いかにも無理のある構造のように見えます。たとえるなら、町中に立っているタワークレーンの下をあなたが歩く時を想像してもらえば、その「大変さ」が分かるでしょう。かなり無理のある構造なのです。これらの状況を克服してきた時計が、いかに偉大な工業製品か、たまにはそこに思いを寄せてみてもいいでしょう。

 

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 次回

耐震、防水、耐磁【連載】 - 夜明け前の…