腕時計は、「やっぱりスイス」なのか【連載】

第1回:

さて、時計と言えば、スイス製という印象(=「スイス信仰」)が強いと思います。実際、世界の有名な時計ブランドの多くは、スイス発祥です。たとえば、パテック・フィリップ、オメガ、カルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタン等挙げればきりがありません。また、スイス信仰があまりに強いので、時計ブランドを立ち上げるのに、わざわざスイスの名を語ることもあります。今日、クォーツ式時計が普及したため、数量ベースでは中国製造(=香港経由での輸出)が圧倒的に多くなりましたが、金額ベースになるとスイス製造、とりわけ機械式時計が大きく逆転します。つまり、平均単価となれば、スイス製の時計が圧倒的に高いのです。たとえば、日本市場の状況を感覚的に言えば、日本製のブランド時計は5~10万円が主力となるのに対して、スイス製の有名ブランド時計は20万円から100万円を越えるものまで。では、なぜ、その高級品の代名詞であるスイス製の時計は、人々を魅了するのでしょうか。

 

https://qzprod.files.wordpress.com/2014/12/the-two-dominant-watch-exporters-couldn-t-be-more-different-units-value_chartbuilder.png?w=1024

世界を代表する時計工場と言えば、スイスと中国。ただし、両者には大きな違いがある。わずかな数量(Units)に対して大きな金額(Value)を稼いでいるのがスイス。中国は安物の量産を行っていることが上記の表ではっきり分かる。

 

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序文

時計と時間についてのお話:連載にあたっての序文 - 夜明け前の…

 

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ちなみに、「時計はやっぱりスイス」というステレオタイプの表現を信じている方は注意が必要です。今日のグローバル時代では、スイスに工場を構えながら、部材を世界中から調達し、外国の人々にそこで働いてもらうこともできます。それでも簡便的にはスイス製造です。しかも時計には、膨大な数の偽物が出回り、怪しげなスイス・メイドとして世界中で販売されてもいます。したがってスイス本国でも、「Swiss Made」の表記に関する定義を厳しく法律で定め、監視していく試みがなされています。もちろん、消費者個人がこれを見分けるのは至難の業であり、正規流通店舗やメディアなどの役割が重要です。スイスの文字に惑わされないようにしてください。

 

FH - Swiss made(スイス製):本物の保証

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では、本題に戻りますが、果たしてスイス信仰は正しいのでしょうか。確かにスイスは、世界の大国との激しい競争にさらされながら、見事に勝ち残ってきました。主に、次の理由が考えられます。時計は、自動化しづらい製品特性があり、人材及び技術継承の優れたところが生き残りやすくなります。ゆえに、他の工業国が一度この時計産業を手放してしまうと、復活は非常に難しくなります。スイスは幸い目移りすることなく、奇跡的に時計を作り続けてきました。そこに勝因のひとつがあります。しかし、実際には、スイス製=高級品という定式は、クォーツ式時計が登場し、スイスの時計産業が崩壊しそうな窮地に追い込まれて以降、創り出された新しいコンセプトです。

 

これらのことを念頭に、スイスの時計をめぐる歴史を概括してみましょう。

 

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スイス時計の過去と現在の栄光〜幾多の変遷をへて築かれた「時計王国」の舞台裏 - トレンド - nikkei BPnet

http://www.nikkeibp.co.jp/style/life/topic/watch/060427_map480.jpg

 

 

次回

知られざる時計業界の変遷【連載】 - 夜明け前の…