時計の買い方【連載】
第3回:
時計業界は今、三極構造に分かれています。最上位は、スイス勢を中心とする高価格帯の時計群です。人材力や、歴史的に培ってきた知名度・信頼性は抜群です。中位には、日本のクォーツムーブメントを使用した中価格帯の時計が圧倒的なボリュームを形成しています。そして低位には、近年登場したプラスチックムーブメントを採用している格安時計です。無名ブランドの時計やイベント用の粗品、玩具など、短寿命の用途が主です。意外と裾野の広い市場になっています。
100円均一の時計であっても、時刻制度は抜群だ。なぜなら、クォーツ・ムーブメントの正確さは、圧倒的だからである。ただし、製品寿命となると多くを期待できない。まずは電池寿命が1年をもたない。さらに、プラスチックムーブメントが使われているため、修理やメンテナンスなどもできない。あくまで、その場しのぎで考えよう。
世界最大の小商品市場は、中国の義烏にある。広大な中国市場だけでなく、ここから世界中に出荷されていく。小商品とは、簡単に言えば、100円均一で売っているような商品のことだ。もし、興味があれば一度行ってみたらいい。同地は、上海から高速鉄道に乗って、南に90分行ったところにある。観光地ではないが、色々な国からのバイヤーも来ており、非常に面白いところだ。
序文
時計と時間についてのお話:連載にあたっての序文 - 夜明け前の…
第1回
腕時計は、「やっぱりスイス」なのか【連載】 - 夜明け前の…
第2回
もし、皆さんが高価格帯の時計をお求めになるなら、正規流通店舗へ行かれることをお薦めします。その大半は機械式時計となるはずですが、一生ものとなる時計です。二年に一度と言われるメンテナンスを正しく実施してもらえることが重要です。一方、格安時計は、本記事ではお薦めしていません。一年ももたずに止まってしまうことが普通です。修理やメンテナンス、電池交換などを無視した売り方がなされている場合は、この類の時計だとお考えください。
分解掃除が必要な理由|お手入れ|修理・サポート|セイコーウオッチ株式会社
現実には、多くの人が中価格帯の時計を選ぶはずです。クォーツでも、スイス製造でなくても、使い方によっては10年以上使用できます。やはり、メンテナンスを大事に考えましょう。ただ、今日ではネット販売が急速に台頭しています。好きな時間に、自宅で、路上で、多くのモデルを一覧することができ、しかも決済に現金は必要なく、通常なら全国どこでも配達してもらえます。おまけに価格も高くないのですから、むしろ、ネットで買わない理由がないほど便利なチャネルです。それでも、できる限り、メンテナンスのことを考えて購入しましょう。つまり、お店の対応力や人のサービス姿勢を、ネットの向こうに感じ取ってください。
ここでは主に、中価格帯の時計の話をしますが、中価格帯とは、即決で買うほど安くはなく、月給を越えるほど高くもない時計を指します。中価格帯でのお客様の行動は、通常、1)迷いながら買う; 2)見比べながら選ぶ; 3)買った後も一抹の不安がある という傾向にあります。購入した時計が、高級品のように、100%信頼し、要求できるブランドとは限らないからです。また、買い手の購買動機の大半は、お店の立地や偶然見かけた、知り合いから紹介されたなどの機会によるものです。つまり、どちらかと言えば「何となく」買ってしまうことが多く、これも後悔してしまいがちな原因のひとつです。注意すべき対策は二点。ひとつ目はすでに述べましたが、メンテナンス視点での確認。もうひとつは、中価格帯に、プラスチックムーブメントを使用した、メンテナンスできない格安時計の類が混ざりこんでいることもあるので、注意してください。
▼メタルムーブメントの記事
http://www.jcda.or.jp/center/shuppan/dou163/d163_08.09.10.pdf
次回
時計はなぜ動くのか、この問いに答えられますか【連載】 - 夜明け前の…