時計はなぜ動くのか、この問いに答えられますか【連載】
第4回:
素朴な質問ですが、答えられる人はあまり多くありません。たとえば、皆さんの自宅にある目覚まし時計、掛け時計、そして腕時計。これら時計には、欠かすことのできない、二つの重要な要素(=機構)があります。それは何と何でしょうか。
その一つは動力源、つまり、動かし続ける仕組みのことです。もう一つは何でしょう。調速・脱進機構、つまり一定のリズムを作り出す仕組みのことです。正確に時を刻むとは、まさにこれを指します。大昔、この二つの課題を克服する素晴らしい時計がありました。お分かりですか。それは日時計です。太陽は常に勝手に動き、一定の周期で同じ位置に戻ります。地面に棒を立てたときの影で作る日時計は、動力の心配をせず、精度もそれなりに優れた時計でした。
序文
時計と時間についてのお話:連載にあたっての序文 - 夜明け前の…
第1回
腕時計は、「やっぱりスイス」なのか【連載】 - 夜明け前の…
第2回
第3回
ところが、日時計はやはり不便でした。太陽の光を全方位から受けられる広い場所が必要です。また、真南の方向を特定する必要がありました。さらに、雨や曇の日、そして夜間は使えません。これらの理由から、人類は日時計の代わりに人工的な時計を作ろうとします。それが、水時計であり、砂時計でした。そしてずっと後の時代には、重石をつけた機械式時計も作られるようになりました。
時計を自ら作り始めた人類は、ここで、前記した二つの難題に直面します。その一つが動力源でした。たとえば、砂時計なら、砂が下に落ちてしまえば終了です。初期の機械式時計に使われていた重石も同様、下に落ちきってしまえば動きません。蓄えた動力をいかに長く使うかは、時計にとっての積年の課題でした。その劇的な解決策が、機械式時計のゼンマイバネでした。これは、金属を細く長く加工し、その弾性を利用する部品です。バネを巻き上げ、蓄えたエネルギーを少しずつ開放することによって時計を動かします。また、緩んだバネは、何度も巻き上げて使うことができるので、後に登場する錘が、その巻き上げ役を担います。これにより、巻き上げの自動化に成功しました。こうして、自動巻きと呼ばれる機械式時計は、身につけている人の運動が、腕時計を通して、バネにエネルギーを蓄えさせるようになりました。この大きな飛躍を遂げた時計は、20世紀半ばさらなる飛躍を遂げることになります。
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クォーツ式時計の登場です。しかし、革命的に生まれ変わった時計は、相変わらず、動力源の問題に悩まされます。それが電池でした。やがては電池交換が必要になる。たったこれだけのことで、どれほどの時計が使われなくなってしまったでしょうか。コンセントにつなぎ続けられない時計に関しては、動力源の問題はついて回り、スマート・ウォッチの時代になると、なおさら大きな課題になりました。連続稼働を義務づけられている時計は、まさにこの古くて新しい問題に、初期の頃から悩まされ続けていたのです。
日時計のあと、登場したのが「水時計」だ。水を重力の力で下に流し、たまった(通過した)水の量で時間を測ることができる。あるいは、図のように車が動き、時間を表示する部分が動き出す。このときも、水を流し続けるという動力が必要。川などから水を引いていれば、日時計と同じく、動力の問題は解決できる。
次回
時計はなぜ正確なのか(調速機・脱進機の役割)【連載】 - 夜明け前の…