カフェ店経営の教科書に学ぶ、商品・サービス戦略
となりの「カフェ」が儲かっている本当の理由―居心地の良いカフェを作って儲ける方法!
- 作者: 中村新
- 出版社/メーカー: ぱる出版
- 発売日: 2009/06
- メディア: 単行本
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本書を、ちょっと「ひねくれた」読み方で眺めてみました。「カフェ」をビジネスモデルに置き換えると、ビジネスの本質を非常に分かりやすく語ってくれているのが分かります。カフェを開く気がある人も、ない人も、参考にできる良書だと思いますね。
「いつ来ても変わらないお店を作れ」とは、顧客と高頻度で接点をもてるビジネスモデルを作った方がいい、との意味です。もちろん、期待があるから来てくれるわけで、その期待に応えることがmustになります。また飲食業のQSC(品質✕接客✕衛生)とは、期待通り、双方向の人間関係、そして「きちんとした」商品・サービスという三点で置き換えることができます。さらに、日替わりメニューの部分は、ちょっとしたサプライズを指します。
商売、特に消費者向けの商品・サービスは、顧客の高感度と「お得感」が二大支柱になります。カフェで言えば、お店の外装・外観・手入れ具合などは、顧客と接点をもつ入口の部分であり、何にもまして重要なところです。入店してからの清潔感や厨房のライブ感なども、お店の高感度を左右します。そんな感じで、自社の商品・サービスが顧客の目線でどのように映っているかは、いつも気にしておく必要があります。商品力にあぐらをかいていると、足元をすくわれやすいポイントです。次に「お得感」ですが、これは基準価格をどこに置くかが重要です。缶コーヒーの110円を高いと感じることもあれば、ホテルに出店しているスタバの山盛りトッピングカフェの500円が安く感じる場合もあるでしょう。ムダに高いというのは嫌われます。価格にどのような意味を持たせるかが、実際の販売結果を左右することになるはずです。
民間企業である以上、経費をどう下げるかは至上命題です。カフェ経営の極意として著者が薦めているのは:
- 賃貸物件を避け、店舗は買ってしまえ
- 契約農家を作ろう
- 悪い立地にはしがみつかない
- 自家焙煎せよ
これをその他のビジネスに翻訳すると、最初の不動産物件;「借りずに買え」は、マクドナルドにもある事例です。不動産や金融など、一見、「やむを得ない費用」というだけで扱ってしまいがちだが、知恵を入れることで選択肢が色々と出てきそうです。そんなマクドナルドも一番いい立地を確保しようとしています。立地や販売チャネルは選び、そして果敢に変えるべきでしょう。他方、商品に関わる部分は、差別化や個性化を図ることが最も大事です。契約農家や自家焙煎などが意味するのは、商品を「人任せにしない」こと。
私が他にも重視していることは、マーケティングです。立地がよくて、個性的な商品が作れても、それで売れるとは限りません。メニューの中で「見てもらう」「読んでもらう」「面白がってもらう」ことで、注文やリピートが回っていきます。また、本書では捨てメニューという言葉もありましたが、目標の商品を売るために活かす他の商品もあるわけです。カフェで言えば、セットメニューにしたり、キャンペーン商品にしたり、写真表現を工夫したり、さらには器を変えるなどの手で、商品の情報を届けることができます。
最後に「客単価を上げる」ことと、カフェでの「盛り付け工夫」について。商品の素材を見直し、新しい挑戦をし、顧客が感じる細部にまで目を配る。そうやって商品の価値・価格を上げるのが王道です。セットメニューにして、関連商品を売る手もあるでしょう。商品をシリーズ化して、上級バージョンを登場させるのもいいでしょう。特に注視したいのは、「盛り付け」のように、見た印象を変えることです。人は結局、主観に左右されて判断するものです。全体の雰囲気で商品価値を引き上げるのは、むしろ超王道と言えるでしょう。安易な値上げは厳禁ですが、こうした前向きな取り組みは、むしろ積極的に行って、顧客の審判を得るべきだと思います。価値の上がった商品を、特価お試しでサプライズ活用することもできます。お店のそうした姿勢が、たとえ失敗しても、顧客との対話を呼び覚ますはずです。カフェ以外の商品・サービスもまったく同じ理屈だと思います。