日本文学の、古典ベストセラーで笑ってみよう

日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典

日本人なら知っておきたい日本文学 ヤマトタケルから兼好まで、人物で読む古典

 

 

日本人の知らない日本語』シリーズで堪能しましたが、このお二人の組み合わせは最強です。同書(マンガ)では、冒頭で登場している清少納言も、最高です。『枕草子』にて、世の中をバッサバッサ切るという彼女の感性は、みんなが言いたかったことを代弁してくれているようなものです。炎上を恐れず、こうやって、みんなの溜飲を下げるというヒット作家の法則は、古今東西同じようです。男の貴族から、「あれは女として、どーなのよ」と言われていたみたいですが、まったくもって意に介さず、逆に相手を蔑むあたりが、強い女をイメージできて素晴らしいです。

 

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今風で、世間をぶった切り(清少納言

 

 

 

歴史と言えば、女性には平安時代、男性には戦国時代が人気と、相場が決まってしまうのですが、 それでも平安時代の方がはるかに取っつきにくいと思います。なぜなら、現代日本人の文化の源流と言えば、室町以降であって、平安貴族の時代とはかなり変わってしまったと言えるからだそうです。そもそも宮廷生活というものが、庶民には、はなはだ遠いものですからね。しかし、本書の角度からその中身を除けば、あらあら、今日とあまり変わりない古代・中世日本人の等身大の姿が見えてきます。

 

名著37 「枕草子」:100分 de 名著

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他方、鴨長明の作品『方丈記』はまったく違った味わいがありますね。長明は、大きく時代が動く中で、青年期・壮年期を過ごしたことになりますが、みずからの人生には苦労と悲哀が続き、ついには、人里離れた住処で、世間を俯瞰した随筆を記します。京都での戦火には目もくれず、その間に起こった自然災害の悲惨さに心を砕きます。1000年前の時代にすでに、必死で生きることを超越した人物が出現していたことに驚かされます。ましてや、その後、『方丈記』は多くの人に読まれ、あの夏目漱石もこれを模倣して作品を書いたそうですから、後世の人々に与えた影響力には、感服するばかりです。

 

5分で読める『方丈記』の常識|現代語訳と解説をイラストで楽しむ一冊 | 1万年堂ライフ

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名著16 鴨長明『方丈記』:100分 de 名著

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まぁ、蛇蔵さんのマンガでは、面白おかしく表現されているので、それはそれで楽しみましょう。

 

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鎌倉幕府に就職できると思ったのに・・・なんてセリフはあったのでしょうか。

 

日本の三大随筆作品として、『徒然草』も無視できません。時代としては鎌倉時代末期ですが、いわゆる時代の価値観がとても不安定になった頃でもあります。それゆえに物事の真贋をきっちり見分けることの重要性にも触れています。本当の教養を身に着け、嘘に踊らされない。(当時とはまったく異なる現代ですが)価値観が多様になりすぎた今にも通じることがたくさんありそうです。作者である兼好法師は、神道から離れ、仏門に入ったのですが、そこでは仏教界の堕落した姿を目にします。人が人の道を歪めてしまう現実に、たびたびぶつかっていたようです。物事の多様な面に気づき、教養をうまく自分の言葉にのせられた彼の作品は、多くの人の教養として長く読み継がれることになります。

 

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今日でも彼の関連書にはベストセラーがあります

 

名著09 兼好法師『徒然草』:100分 de 名著

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ここで、三大随筆家について、整理しておきましょう。良いサイト(枕草子、方丈記、徒然草を比較!日本三大随筆の特徴とは?)から引用しておきましょう。

 

枕草子
作者は清少納言
平安時代中期に書かれた
「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく~」という冒頭部分が有名
「をかし」という言葉がよく使われる
当時の貴族社会や自然美をよく扱っている

 

方丈記
作者は鴨長明
鎌倉時代初期に書かれた
「ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」という冒頭部分が有名
作者の人生観や無常観をよく扱っている

 

徒然草
作者は吉田兼好
鎌倉時代末期に書かれたとされる
「つれづれなるまゝに、日暮らし、硯に向かひて、心に移りゆくよしなしごとを~」という冒頭部分が有名
作者が思った事を書き連ねた作品。内容も幅広い

 

 

冒頭書の作者・海野凪子さんは、日本語教師です。それゆえに、日本語の変遷や作品から、敏感に、日本人的なものの変化と固有のものとを感じています。海野さんは日々の外国人との関わりから、日本的なものを感じ、また古典作品などを通して、日本的なものが、今日いかに形成されてきたかを考える動機にしています。「日本文学」と構えると、ちょっとした固さを感じてしまいますが、その実、日本文学とは、日本人の考え方や生き方の表現を担っているわけですから、私たちの源流を知るという意味で、もっと学んでみたくなりましたね。

 

 

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