進化し続ける「ヒートテック」
本書にて、「すごい技術」を紹介するのは、わずかに数ページを割けばすみますが、その原理を発見・発明するまでには膨大な時間と労力がかかります。中には、それに一生を捧げた人もいたはずです。今日、私たちが目にすることのできる、あらゆる人工物はそうした技術から成り立っているのです。それゆえに、本書の作者が、何を選んだかというのに、逆に興味がわきました。最も分かりやすい技術としては、ユニクロの「ヒートテック」でしょう。東レと共同開発した大ヒット商品です。
簡単に言えば、「ヒートテック」は主に、レーヨンで発熱し、アクリルで保温することによって、肌着などの生地を暖かくしている機能性衣料です。その外側にはポリエステルが配されていて、吸い取った汗を外に運んで蒸発されています。三層構造なのです。
流通界の新王者・ユニクロ、フリースを超えた!ヒートテック革命の衝撃《特集・流通大乱》 | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
「ヒートテック」なる商品は、実は発売してから十年以上経つ。それでも毎年改良を重ね、いまだに成長し続けるおばけ商品になりました。空前の売上を誇ったユニクロのフリースが2600万枚だったのに対して、こちらは1億枚。それでもいまだ成長途上なのには驚かされます。
ユニクロヒートテックの素材と原理!昔と今では何が違うのか? | 知恵ペディア
「ぽかぽか技術」…繊維の間に空気ためる肌着 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
基本原理は簡単で、汗を湿気の段階で吸って水に変えることです。そうすれば水分子が水になり、熱を発生します。この熱を逃さないように抱えることで、衣料内の温度を上げています。この保熱は、中空糸の仕組みであったり、その後進化した「アクリルを髪の毛の10分の1程度まで細くする」技術で糸間に隙間を作ったりして、実現しています。これらの技術は実はかなり厄介です。細かく小さく加工する技術や、複数の繊維を束ねる技術、さらにはその他成分を繊維に編み込んでいく技術など、衣料のような伝統的かつ不可欠なモノにほど、高度な技術を盛り込む余地があります。それゆえに、資本力を有する高度技術の会社が真剣に取り組んでくれるのは、ありがたいことだと思います。
その他、本書に掲載されている「すごい技術」をざっと紹介。
- 冷蔵庫:ニーズに合わせた上部からの棚割り(冷凍庫は最下層等)
- 洗濯機:撹拌式・ドラム式いずれもそれぞれに進化。
- 電子体温計:温度の上昇カーブから正確な平衡温度を推測(計算)。
- LED証明:長寿命・省電力ながら、点光源のために光にムラ。
- サイクロン掃除機:フィルターなし、遠心力利用。
- エアコン:電熱器ではなく、凝縮器で湿気を取る。
- 無洗米:胚芽は除去されているが、まだ残っていた肌糠を削る。
- リンスインシャンプー:陽イオン性ポリマーが時間差で髪に絡む。
- 光触媒:菌は、ある金属(酸化チタン)を嫌う。
- 圧力鍋:密封性を高めるだけ。
- 強化ガラス:熱したガラスの表面を一気に均一に冷やして製造。
- タンクレストイレ:TOTO、INAX、パナソニックで異なる方式。
- 紙おむつ:表面材には不織布、吸水材にはSAP、そして防水シート。
- 制汗・制臭スプレー:汗腺を塞ぎ、銀イオン等が臭いを分解。
- 吸水速乾シャツ:多層化させ、毛細管現象を利用して汗を排除。
などなど。書ききれませんね。