スーパーにとって代わるのか、本業回帰となるのか、ドラッグストアの未来

 

平均的なドラッグストアの売場面積は「200坪」くらいだと言われています。コンビニの30坪~60坪に比べればはるかに大きな店舗です。それゆえに平均日販100万円はコンビニの60万円(業界最大のセブンイレブン)を大きく上回ります。取り扱いアイテム数は「17000品目」、これも面積の分だけコンビニ(3000品目)より多くなります。この店舗を回すためには10人くらいを要し、単純計算では20坪あたり1人のようです。今後はコンビニタイプの小商圏店舗(60坪~100坪)が増えるとも言われますが、現実には地方でスーパードラッグ(300坪以上)やメガドラッグ(500坪以上)が増えて、多様な業態との競争になっているかもしれません。

 

 

日本のドラッグストアが誕生したのは、アメリカに学んだからです。時代は、ダイエーを中心にしたスーパーマーケットによる流通革命が本格化した頃でした。アメリカの代表格は「ウォルグリーン」、欧米を中心に約13,200店のドラッグストアを保有します。イギリスのアライアンス・ブーツを買収し、今日の売上1,174億米ドル(約13兆円)、経常利益60億米ドル(約7,000億円)につながっています。米国では一時、ドラッグストアがディスカウントストアに勝負を挑んだ時期もあったそうですが、結果的に価格競争で破れました。それもあり、ドラッグストアは本業回帰(薬局機能の強化)に舵を切っています。調剤比率で、マツキヨと同社とを比べてみる(下図)と違いが明らかになるでしょう。1982年には16%だった調剤が、今日では60%を優に越えています。つまり、ヘルスケアではスペースをきっちり取って品揃えを重視し、それ以外では売れ筋に絞るというわけです。

 

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なお、「2017チェーンストアランキング」では堂々の第6位、業界でもトップをキープしている同社ですが、近年ではアマゾンの衝撃も加わり、新たな対応を迫られています。また、アジア(中国)への進出も本格化するようです。

 

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さて、日本に話を戻しますが、ドラックストアにおけるヘルスケアとビューティケアを合わせた売上構成比率は、6割弱です。少し古い(2010年、冒頭書の)データですが、OTC薬と調剤薬とで22%、化粧品(16%)等のビューティ全般で25%、これに健康食品(3%)等を合わせるとちょうど半分になります。これに対し、食品(20%)と日常消耗品(12%)や家庭用品(7%)も合わせると4割を占めます。粗利がいいのは薬や化粧品。スーパーと競合する日用品では20%も取れないようです。つまり、日本のドラッグストアはいまなお流通全体の中で全面戦争をしている状態なので、アメリカのように本業回帰するのか、それともコンビニやスーパー、ディスカウントストア等を追いやってしまうのか、将来予測はまだ難しそうです。

 

これらの数字を少し違った角度で見てみましょう。ドラッグストアで販売している商品のほぼすべては違うチャネルでも販売しています。ドラッグストアの中核商品であるはずの調剤薬は意外にも全体の4%しかなく、調剤薬は薬局チャネルで売られるのが一般的です。化粧品はそれなりで、25%ほど。もうひとつの中核・OTC薬は(調剤薬とは異なり)かなりの額(60%)がドラッグストアで売られています。このように見ていくと、日本のドラッグストアは薬局とはやはり異なりますね。ちなみに、金額で最も大きいのは「食品」です。チャネル間比較で言えば、ドラッグストア経由はわずか「7%」ですが、全体額が突出しているので、こんな結果になるのですね。

 

新興ドラッグストアの売れ筋アイテム8選|@DIME アットダイム

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流通大戦争にあたっては、ドラッグストアでもPB商品が登場しています。まだコンビニほどではありませんが、健康志向をうたった商品が増えていけば、高額販売も可能になるはずです。実際、米ウォルグリーンではPB商品開発にかなり積極的です。日本でも、インバウンドが一段落しつつある今、流通大戦争への生き残りをかけた戦いが本格化するはずです。すでにローソンなどコンビニ勢が医薬品の取り扱いを拡充するのはほぼ確実です。足元の業績が好調なのを受けて、新しい挑戦に手をこまねいているままだと、他の業態からの参入で足元をすくわれかねません。

 

最後に、ドラッグストアの顧客の8割は女性です。年齢も若干高くなるようです。ちょっとしたことにでも敏感になる層で、かつ一度信頼すれば「ロイヤリティ」は高い層なのかもしれません。価格に敏感ではありながら、わりと総合的な評価でお店を選択するのも特徴のようです。そう考えると、必ずしも「スーパー」化してしまうことがドラッグストア各社にとって得策とは限りませんね。流通大戦争の中で、日本的なあり方を模索するのか、アメリカの後追いをするのか、今後の展開が非常に楽しみです。