ビジネストレーニングにはフェルミ推定

 

本書には思考法・発想法以外に様々なビジネス事例が掲載されています。知識を吸収する意味でも良書と言えます。その中には、フェルミ推定に関するものもあります。たとえば、北海道の観光客数(道外からの訪問)は年間何名でしょうか、という問い。本書の回答を読む前に、適当に計算してみましょう。

 

 

北海道は島なので、大半の観光客が飛行機で訪れると思います。仮にこの数字が全体の8割と仮定します。さらに、東京からの顧客が飛行機で来る観光客の4割くらいと、これまた仮定します。記憶が誤りでなければ、8時前後から22時まで、一時間あたり3~4本の飛行機が飛んでいます。一便の搭乗者数を約100名とすると、東京から飛行機で訪れる客数は179万人=「100*3.5*14*365」、これを4割で割り、さらに8割で割ります。私の答えは560万人でした。あと、外国人を含めると、日本人の5名に対して外国人1名とすれば、100万人くらいがプラスされるので、両者合わせて年間700万人。かなり乱暴な計算ですね。では正解は何名でしょうか。

 

観光統計ポータルサイト | 経済部観光局

 

北海道の観光当局が発表したデータ(2016年)によると、道外客は594万人、外国人は230万人、合わせて824万人。私の推計との差は124万人でした。外国人のところで大きくはずしてしまったようです。ちなみに本書の推計方法を見ると、やっぱり飛行機に注目していますね。ただし、私が見落としていたのは、一便辺りの人数は250人、そのうちの半数が道内居住者としている点です。たまたまそれで一便120人となって私の値(一便100人)と近いのですが、ロジックがひとつ漏れていました。

 

次の問題。日本は自販機大国です。自販機オーナーが日本全国にいて、飲料が一本売れるごとに儲かる(24円)仕組みになっています。ただし、電気代は毎月(4000円)かかるそうです。平均的には毎月儲かる(10000円=粗利)というので、膨大な数の自販機が維持されているのだそうです。さて、たったこれだけの情報から、日本全国の自販機台数が推測できるでしょうか、という問いです。単純計算で毎月580本以上、毎年7000本売っていることになります。私が自販機あまり利用しない消費者者だとして、二ヶ月に一本買います。他方、毎日一本買うような自販機のヘビーユーザーも2割くらいいるでしょう。自販機を使いえる人口を全人口の8割と仮定すると、両者を合わせて75億本が売れたことになります。これを7000本で割ると自販機は107万台です。

 

本書での推計は160万台でした。その違いは、本書の推計が全人口1.2億人の2割をヘビーユーザーとしている点。私は自販機を使いえる人口を取り出した上でヘビーユーザーを算出していました。実際の飲料自販機台数は、1980年代後半以降、250万台あたりで横ばいになっています。コンビニの普及が急拡大している時期に自販機が横ばいなのは、若干違和感を覚える数字です。それはそうとして、フェルミ推定の数字は意外と優れているというのが私の実感です。もちろん、計算ロジックを誤って見積もれば、桁違いの数字が出てしまうため、ビジネス上の判断を大幅に誤ってしまうので注意が必要です。日頃から、あらかじめ答えが分かっている数字を、自力で推測してみるのもいい訓練になると思います。

 

“飲料自販機”設置競争の熾烈、転機に立つドル箱事業 | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

http://tk.ismcdn.jp/mwimgs/d/d/-/img_dd0efdaa3aa2072fbaf5e057fa33f5b533872.jpg