メタ思考で広げると、可能性が広がる

メタ思考トレーニング (PHPビジネス新書)
 

 

問題にぶつかった時、二つの方向性があるように思います。ひとつは、問題解決の解を、細部に渡って探す方法。もうひとつは、根源的なものに立ち返って、今の問題を俯瞰してみること。本書は後者に関するものです。世の中には、「神は細部に宿る」という言葉もあり、何かを見逃していないか、懸命に現場・現物を見つめ直してみることが推奨されています。大雑把な仕事は、本来成功するはずの事象を失敗させてしまうことだってありますので、この考えに間違いはないと思います。日本人は、この「細部」に関して、たくさんの成功をおさめてきた民族だと言えます。他方、「メタ思考」は、日本人がどちらかと言えば、苦手にしているものかもしれません。なぜなら「根源的」、すなわち、時にはその前提をも覆して、打ち手を大きく変える、という革命的な思考でもあるからです。前者を改善思考、後者を革命思考とでも言えば、納得いただけるでしょうか。

 

キーワードは、“無知の知” 『メタ思考』活用法 | ウェルネスセンターコラム | SBアットワーク株式会社

https://www.softbankatwork.co.jp/sbaw_cms/wp-content/uploads/2018/11/2b530e80c7d0de90885e285c5d798063-1.png

 

 

メタという言葉は「高次元」を意味します。より高い位置から、より広い範囲を見渡すことです。カタカナにするからちょっと難しくなりますが、冒頭の掲載書に面白い事例がありました。「抽象化・一般化なんて無意味だ」と、一般論のように主張する人がいます。「私にはポリシーがありません」とポリシー風なことを言う人もいます。要は矛盾だらけですね。問題はなぜ矛盾に陥ってしまうのか、です。私から言わせれば、矛盾だらけなのが人間で、論理が終始一貫している人の方が珍しいと思っています。

 

 

f:id:cancheer:20190428235215p:plain

「メタのレベルで考える」とは?

 

なぜ矛盾が生じるのか、それは、人が「自分に甘く、他人に厳しい」ものだからです。いわゆるダブルスタンダードです。しかも、言葉の使い方がいい加減です。たとえば、飲み会がつまらなかったとします。ある参加者は幹事に対してこう言いました。「飲み会の時間が長すぎたね」と。もし幹事がそれを真に受け、時間を短くしたとして、第二回目が楽しかったとしましょう。先ほどの参加者はこう言うかもしれません。「もうちょっと長めに時間を設定した方がいいかも」と。身勝手なものです。結局、幹事は、個々の意見を聞いた時に、もう一段レベルを上げて、問題を見てみるべきだったのです。なぜ、飲み会が「長すぎた」と思われたのか、他の人も同様か、そもそも「長すぎた」とは何と比べて長かったのでしょうか。問題を客観的に考えてみる必要があります。

 

ビジネスの事例で言えば、牛丼チェーンの吉野家。ついつい私たちは、すき家松屋などの既存牛丼チェーンをライバルだと思ってしまいますが、実際はどうでしょうか。たとえば、来店した100人の客のうち、吉野家を最初から指名していた顧客はどれくらいいて、道沿いだから寄った顧客の割合はどれくらいだったのでしょうか。前者の顧客のうち、「絶対、吉野家」という固定ファンはどれくらいいて、条件によって他の牛丼チェーンを選択する人は何割いるのでしょうか。さらに、後者の顧客は、他にどのな店舗と比較していたのでしょうか。ラーメン屋やカレー屋、ファミレスやコンビニなどの選択肢があったかもしれません。こう調べていくと、実は、牛丼チェーン同士が激しい競争をしているのは幻想にすぎず、新たな事実が見えてくる可能性もあります。 

 

 

回転寿司、実はみんな「回っている寿司」を取ってない!? ビジネス、今日のひとネタ | LIMO | くらしとお金の経済メディア

https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/c/8/-/img_c8e88dae882974d99f9cec038be6653c662232.jpg

 

 

目の前の現象からその背後を探るキーワードが、「Why」です。「Why」は特別な言葉で、他の「What」や「How」とまったく違います。一段上がって、他とのつながりを考えようとする言葉です。たとえば、回転寿司ビジネスが日本では非常に大きな人気を得ていますが、人々は果たして回転する寿司を食べているのか。ある調査では、最初からレーンを回っている寿司を敬遠したがる人が(「絶対取らない」「たまに取る」を合わせて)70%にのぼるそうです。じゃあ、回転寿司は何のために回転しているのでしょうか。ここを考えるのが、メタ思考です。今日の顧客は、各席のタブレットで簡単に注文できます。そして数分もしないうちに、それがレーンを流れてきます。店側のオペレーションもほぼほぼ自動化できています。したがって、そこに厄介なタイムラグは存在しません。つまり、結果的に、各条件が整ってきたがために、オーダーメイドが一般化し、量産されてレーンを回っている寿司はあまり食べられないという珍現象が生じるようになったと考えられます。工場で起こった「大量生産から多品種少量生産」の現象が、ここにも必然的に生じたのかもせれません。

 

では、回転寿司のビジネスモデルが、これだけ成熟してきたのですから、他にも応用できないか考えてみましょう。これがアナロジー思考、すなわち類推する力です。これには、メタ思考が不可欠です。回転寿司の成功を他に応用する。そのためには、回転寿司のどの特徴にフォーカスするのかを考えます。寿司は小分けされた器です。オーダーメイドとは言っても、ある程度、品種を制限した工場ラインのようになっています。また、このモデルの肝は、何より安価(=省人化)な運用を実現させたことです。さらに、顧客が選べる点も大事な特徴の一つでしょう。たとえば、しゃぶしゃぶの具材や、ラーメンのトッピングなどが回転してきても面白そうです。顧客がそれらを選択的に拾い上げ、簡単な調理や飾り付けをするという仕組みに応用できます。そう考えていくと、焼き肉だっていいし、具材を追加するお好み焼きでもできそうです。

 

中国でも自動販売機が増えてきた理由は?実際に自販機を使ってみた | Guanxi Times [グアンシータイムス]

https://cdn.shortpixel.ai/client/q_glossy,ret_img,w_640/https://wakuwork.jp/wp-content/uploads/2016/10/IMG_2319.jpg

 

 

中国では今、自販機が激増しています。地下鉄の延伸とともに増えてきた印象ですが、販売されているのは飲料だけではありません。食べ物が多く、書籍や日用品、さらには(自販機とは違うのですが)独りカラオケのボックス設備も登場しています。また人気があるのは、その場でオレンジの皮を剥くジュース生成器です。意外ではありますが、自販機大国・日本を凌駕する勢いで、新しい自販機が誕生し続けています。もちろん、スマホ決済を備えているので、コインの煩わしさを感じる必要もありません。こうした中国の躍進は、日本の単なるモノマネではなく、思考を働かせたからこそ成し得た独創的な結果とも言えそうですね。中国、恐るべしです。私たち日本人も負けてられませんね。