化粧品に関する誤解とは、メーカーが誤解させている可能性があります

ウソをつく化粧品

ウソをつく化粧品

 

 

嘘八百がまかり通る、それが化粧品業界の恐ろしいところなのだそうです。たとえば、「天然成分」という表現。天然だろうが、化学物質だろうが、発がん性物質になってしまうものは危険です。また「植物エキス」と書かれていても、それを皮膚に浸透させるためには、皮膚のバリア(油分)を壊して、内部に浸透させなければなりません。そもそも皮膚は吸収器官ではないので、ここのバリアを無理やり壊すべきではないのです。

 

さらに2001年の薬事法改正は、「化粧品」に関して全成分表示が義務付けられたのですが、その実、化粧品より効果(刺激)の強い「医薬部外品」については、102種類の「表示指定成分」以外は記載する必要がなくなりました。もう少し具体的に言いましょう。医薬部外品は、ポジティブリストに入っている成分を使うことになるのですが、ネガティブリストに入っている成分は使えません。それら以外の成分は、自由に使って、しかも表示をする義務がないのです。行政もその第三類の成分の安全性をチェックすることはありません。ゆえにメーカーは、逆に、目新しい成分を使用して新製品を作りやすくなったわけです。本書では、これを事実上の規制緩和と称しています。

  

 

この薬事法改正によって、日本化粧品工業連合会の正会員数も一気に増えました。2001年の700社が、2014年には1100社。新規参入が容易になっているのです。しかも原価は驚くほど安かったりするので、やり方によってはボロ儲けしやすい業界です。ひとつの鍵は「医薬部外品」です。そのポイントはあらかじめ指定されている有効成分にあるのですが、その効果を出すためには、肌の内部まで浸透させる必要があります。しかし、内部に至るには、界面活性剤によって肌のバリアを破らなくてはなりません。うがった見方をすると、その界面活性剤を表示させないために、「医薬部外品」には全成分表示をしなくてもよいというルールになったかのようでした。これを本書は「抜け穴」と言っています。 

 

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本書が挙げている「オーガニック」の事例です。そもそも化粧品に、そんな言葉の定義はないそうです。また、安息香酸Naは発がん性が懸念されている物質。しかも、デシルグルコシドは合成界面活性剤です。宣伝文句ではノンシリコン・ノンケミカルという文字が踊っている商品ですが、化粧品として製品化されている以上は、「ノンケミカル」という表現にも違和感を覚えます。

 

GENOA | ゼノア化粧料本舗 : 皮膚のしくみを知ってください

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ちなみに、肌のバリアとは、皮脂膜と角質層です。外からのアレルゲンや有害物、ウイルスや細菌の侵入を防いでいます。また、内からは体内の水分が蒸発しないようにしています。実はこれだけではありません。「角質細胞間脂質」、これも第三のバリアを形成していて、油の層と水の層が交互に折り重なったものです。これら三重のバリアを壊してしまうと、「保湿が持たない乾燥肌」となり、「シワやシミができやすい肌」になります。あの、カネボウの白斑被害は、ロドデノールという原因物質に加えて、合成界面活性剤によりバリアを壊していたことが招いた結果でした。美白化粧品にありがちな仕組みの、いつかは起こり得た結果だったのです。

 

ついでに言うと、シャンプーや石鹸などは界面活性剤です。これを使うと、皮膚は一時的に皮脂膜を失います。そしてこの洗浄が角質細胞間脂質にまで及ぶと、皮膚は水をはじく力を失い、角質層内にある水溶性の成分も流出してしまいます。すなわち、これが体にもともとあった保湿成分なのです。仕事でシャンプーを使い続ける美容師さんの手荒れは、まさに皮膚のバリアが壊れてしまったためです。逆に皮脂が溜まりすぎることもあります。動物が舌で身繕いをするのは、この皮脂を舐め取っているのです。人が水洗いをするようになったのもこの理屈です。

 

 

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肌のバリアの重要性は先に述べた通りですが、皮脂に見立てた油と、保湿のための水分を加えるために、数多くのクリームが開発されています。 そんな中でも、「馬油」などが人気です。これは歴史的に、人の皮脂に限りなく近い組成だと判断されたからです。馬油は皮脂不足を直接補うためのものだと言われていますが、果たしてどうでしょうか。本書の筆者は、馬油が馬の皮下脂肪を原料としていることから、(そもそも)馬の皮脂ではないと疑問を抱いています。ともかく、化粧品会社が言うことに対しては、いちいち疑問をはさんでみるべきかもしれません。

 

過激な言葉で、化粧品を一刀両断している本書の筆者が言いたいことは、たったひと言です。人の体は水であり、人の皮膚はその水袋である、その袋を傷つけるな、と。強靭の皮である角質層(すでに死んだ細胞たち)が、体を守ってくれています。そのバリアである皮を、私たちは化粧品や石鹸・洗剤で壊してしまおうとしています。ましてや、何らかの成分を本気で「浸透」させようとする行為は、バリアを壊して初めて可能となることです。その代表が、美白成分です。たとえるなら、下着を、繰り返し漂白し続けてしまうようなことで、最後に肌がボロボロになってしまわないか心配です。所詮、体にとって正常な防御反応である「メラニン」を、還元剤か酸化剤という化合物質で対処しているのが美白剤の正体です。これが健康によいことだとはなかなか思えません。また、もうひとつ。保湿やら水分補給やらがやたらと叫ばれる今日ですが、肌細胞からの正常な水分蒸発を邪魔していないでしょうか。皮膚表面は、蒸発でもって「角化」が進んでいきます。最表面の細胞が死んで(=角化して)こそ、次の細胞が台頭します。これを新陳代謝と呼びますが、これらが不完全な場合、「不全角化」が生じ、代謝を妨げてしまいます。

 

【医師監修】皮膚常在菌の種類と役割とは? | オーガニック化粧品のピュアノーブル

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皮膚を守る上では「常在菌」のことも考えましょう。常在菌が皮脂を食べることで、脂肪酸を算出し、肌表面を弱酸性にしています。これは実は、外部からの雑菌の繁殖を抑えている状態でもあります。ゆえに常在菌が安全に食せるものを、肌に給しておくことは極めて重要です。これはいわば、皮膚の生態系とも言うべき仕組みです。この生態系をぶち壊すのが、界面活性剤。肌に色々なものを浸透させようとした時に、否応なく使う成分です。「油と水とを混ぜる成分」だから、皮膚のバリアを突破できてしまいます。そして肌トラブルの最大要因となっている成分でもあります。それは、石油系だろうが、弱酸性・アミノ酸系、ポリマー系、天然由来、いずれを問わず、「強い」ものは肌を痛めてしまいます。これがこっそり、配合されている化粧品は、要注意なのです。

 

他方、石鹸は意外と安全だと言われます。なぜなら、「弱い」からです。皮膚の汚れと結びつき、皮膚の弱酸と中和して、洗浄力を失いながら流れ去ってしまいます。しかも肌に残った石鹸カスは常在菌のエサとなります。要は、「弱い」界面活性剤なら問題ないのです。この強い弱いという観点は、化粧品を選ぶ時に注意してもらった方が無難だと思います。