現代中国のことを、まとめてみると。。。

図解でわかる 14歳から知っておきたい中国

図解でわかる 14歳から知っておきたい中国

 

 

中国は今や、世界第二位の経済大国です。アメリカの6割に迫る経済規模ですが、この差は為替如何でさらに縮まっている可能性があります。なにしろ、車の販売台数で言えばアメリカを大きく上回り、年間3000万台に達する勢いです。鉄鋼生産、エネルギー消費すべてにおいてすでに世界一位。そんな大国が12兆ドルのGDPに対し、輸出・輸入でそれぞれ2兆ドルを占めるわけですから、世界への影響力も巨大です。また、省別で見ても、国家レベルを越える省が出現。たとえば、広東省ひとつで1兆ドルに近づく規模は、世界の先進国に並び立つほどです。ちなみに、日本は5兆ドル弱。もはや中国全体と争うまでもないですね。

 

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中国省別GDP

 

 

中国でよく言われるのは、その巨大な経済格差です。浙江省江蘇省広東省福建省などは、いわゆる沿海部の経済発展著しい地域です。山東省はこれに続き、沿海部に隣接する湖南・湖北・安徽・江西省も離陸に成功しました。しかし、もう少々内陸に入ると、一進一退です。かつて高度成長を謳歌した旧満州・東北三省もなかなか苦戦を強いられています。ましてや雲南チベット・新疆などは、少数民族問題などもあり、官製的な投資の依存度を高めています。中央政府から地方政府への財政援助額は「6.5兆円」(2017年)、GDPの7.8%にものぼり、中央政府財政支出総額の7割近くを占めています。その甲斐もあってか、農村の貧困人口はいまや3000万人。「6億人の貧困問題を解決した」とかで、かつての経済大失政(大躍進や文化大革命)を挽回するほどの成果を上げています。

 

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この成果を事実上実現したのは、鄧小平の改革開放路線です。何度も失脚しながら、不死鳥のごとく蘇った、中国の救世主です。毛沢東の失政によって大混乱に陥った中国を「実事求是」のスローガンのもと、経済成長の取り組みが始まりました。彼は権力の表舞台には立たず、党主席に胡耀邦国家主席趙紫陽を起用し、みずからは党中央軍事委員会主席を務めました。昔も今も、軍の主導権を握ることが最も重要だったのですね。途中、天安門事件が起こり、世界的に孤立した時期もありましたが、鄧小平は社会の安定と経済の発展を優先し、その路線を江沢民に託しました。江沢民は「上海閥」を形成し、愛国教育に力を注ぎました。その後、胡錦濤時代には北京の青年団へと重心が移り、西部大開発が始まりました。

 

元中国共産党エリートが語る「日本人の中国予測はなぜ間違えるのか」 (2017年12月4日) - エキサイトニュース

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 しかし、この「大開発」が腐敗の温床のひとつになってしまいました。国の恣意的な資金投入は、どうしても腐敗官僚を生み出ししまうものです。重慶共産党書紀だった薄熙来が逮捕されたのは、その象徴でした。これを推進したのが、新しい指導者・習近平です。太子党とも呼ばれ「上海閥」に近いと目されていた同氏でしたが、反腐敗運動では、あらゆる派閥の高官を容赦なく処罰しました。たとえば石油利権の大物・周永康、軍隊の大物・徐才厚郭伯雄や令計劃なども摘発されました。5年間で高級官僚は105人が起訴され、摘発された公務員も25万人を立件したそうです。国民の支持率はかなり高くなり、権力基盤も強化できた習近平は、国家主席の任期を無制限とし、権力闘争に勝利したことを内外に示しました。

 

 

今、習近平は、もうひとつの政権の柱として、「中国の夢」と称した中華帝国の栄華復活を目指しています。世界中で話題になっている「一帯一路」はその結実です。国内資金を海外に向け、過剰生産資材の使用先にもするという実利にかなった政策です。同時に、精神面でも、かつて列強に切り刻まれた歴史をもつ中国が、再び世界をリードする大国の地位を取り戻すという意味が含まれおり、非常に優れた政策アイデアだったと思います。

 

列強の中国分割 - 世界の歴史まっぷ

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中国は今、曲がり角に来ています。経済成長に陰りが見え、一人っ子政策の後遺症として人口ボーナスも消失しつつあります。これからは、日本以上の少子高齢化と、政府の潜在的財政赤字が重くのしかかってくるはずです。そこに加えて、米中貿易摩擦ですから、(権力闘争に勝利したとは言え)政権の前途は決して楽観視できません。そこで繰り返し出てきては消えてしまう「中国崩壊論」ですが、統制経済の度合いを強めることで、問題が顕在化することを必死で食い止めているのが現状では。そういう意味ではあながち間違いではありませんが、一部の識者は肝心な点を見逃しています。それは崩壊の定義です。政府の崩壊を指すのか、不動産価格の崩落を指すのか、はたまは失業者増大による社会不安を指すのか。そこが曖昧なままでの「崩壊論」は、ただ単に、中国嫌いの人の妄想や願望というレベルに留まってしまいます。

 

newspicks.com

「中国崩壊論」の嘘とホント | 風刺画で読み解く「超大国」の現実 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

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私なりの結論ですが、中国の経済政策はよっぽど他の新興国よりうまくいっています。株価や不動産価格がさらなる下落を招くことはありますが、政府の激しい措置によって、コントロール内に収まるのではないかと考えます。それくらい、中国政府のコントロールは徹底しているからです。では何が心配か。強いて言えば、経済成長が完全に止まってしまうことでしょうか。成長率の統計は、実態よりかなり高く出ているという感じがしていて、すでに1~2%のような気がしています。成長がひとたびゼロに近づけば、生産性は毎年上がりますので、失業者が徐々に出てくるかもしれません。経済成長が牽引した都市の拡大、それにともなう農村からの人口移動、そして経済規模は成長し続けました。このサイクルに終止符が打たれた時、出稼ぎ工(失業)の問題などを政府はどう吸収していくのか。隣国の私たちも、ビジネス的に影響を受けるはずですから、しっかり観察し続けておきたいと思います。