がんに感謝できれば、正しく理解できているかもしれない

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」

 

 

がんについての皆さんの関心は非常に高いと思われます。何しろ、今日の死亡原因の上位を占めているのですから。しかし、その「がん」に関しては、トンデモ本があまりに多く、何が正しいのかさっぱり分かりません。根拠が不十分でありながら、医師・学者の資格をもって好き放題書いているとしか思えないものが散見されます。その観点から考えると、本書のスタンスは非常に公正だと思われます。がんを部位別に正しく理解しようという提案です。

 

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罹患率では「大腸がん」がトップに躍り出ました。しかし、相対的な死亡数はそこまで高くありません。つまり、大腸がんは治るのです。また、その罹患数も、発見しやすいがゆえに、上位にくるわけです。発見しやすく、対処しやすい、それが大腸がんなど、消化管のがんだそうです。胃がんも同じですね。ステージ1なら、9割の患者は助かっています。そこで専門家がお薦めするのは二つ:検査による早期発見と、がんになりにくくする体質改善(リスク因子の除去)。

 

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 「治る」がんで死なないようにしたいとは本書の主張です。筆者はみずからマンガ表現ができる方なので、本書にもたくさんの挿絵・マンガが使われています。ここで引用しているマンガはと同著者の別の書籍『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』からです。

 

医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方

医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方

 

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医療関係の知識はなかなか正しく伝わりません。たとえば、最近言われだしたのは「胃がんの、ピロリ菌原因説」ですが、これですら正しく伝わっているとは言えません。ピロリ菌を除菌したからと言って、リスクはゼロになりません。また胃がんの原因が、100%ピロリ菌でもありません。がんは何らかの原因で、細胞の一部が異常増殖を始める現象です。ピロリ菌に荒らされた胃壁の表面では、がん細胞が大きくなりやすい、という関係です。以前にも書きましたが、がん細胞(異常増殖)は私たちの体内で常に生じています。それが免疫機構によって一定比率に抑えられているのが健康体。しかし免疫が弱まり、がん細胞が異様な大きさにまで成長することがあります。そこでコイツを取り除くこと、間違っても他の部位に転移させないこと、が必要になります。これが、がんの早期発見・早期治療です。

 

参考:胃がん | ピロリ菌と病気 | ピロリ菌のお話.jp

http://www.pylori-story.jp/disease/disease/cancer/images/img02.png

健康やまぐちサポートステーション / 胃がん

http://www.kenko.pref.yamaguchi.lg.jp/img/jumyou/gan/igan/iganIllust01.gif

 

最後に、本作者のホームページをご紹介(引用)しておきます。作者は「治る」がん、すなわち消化器官のがんに携わっているため、「見つける」「治す」ことの重要性を訴えています。がんもどきの考え方(がんは治療しなくていい)を提唱し、医療界に激しい問題提起をしている近藤誠氏については、手厳しい批判を加えています。正しく、科学的な態度でがんに挑むことを訴え、矛盾だらけの後出しジャンケン論を葬ろうとしています。しかし、その一方で、がん治療のために生きるのか、生きるのためにがんに対処するのか、という本質論にも触れているため、非常にバランスの取れた議論だと思います。がんは、余命までに一定の時間を与えてくれる病です。恐ろしいですが、それでも生を全うしようと考えている人にとってはある意味、ありがたくもあります。人は長寿を獲得したため、糖尿病やがんにも罹るようになりました。その運命を前向きに受け止めるという姿勢は必要だと思います。

 

 

胃カメラの方が優れている2つの理由 - 医療のX丁目Y番地

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