中小企業の見方:決算書の抜け道を押さえておこう

社長のための「中小企業の決算書」読み方・活かし方

社長のための「中小企業の決算書」読み方・活かし方

 

 

決算書を見ただけでは分からない。それが中小企業の経営です。たとえば、「P/L」「B/S」ともに、だ。流動比率を算出して、それが「300%」という超優良企業の水準だったとしても、その翌期内に倒産しえます。しかし、これを見通す方法があります。それは「B/S」を2期分並べて現金の増減を見ることです。このような見方は、銀行員なら当たり前のように行っています。そのポイントを5つ挙げましょう。

 

  1. まず、何よりも本業の利益(営業利益)。
  2. その事業の成長性にも注目する。
  3. 中身のない資産を除いて、債務超過の有無を見る。
  4. 粉飾が難しい資金繰り(現金の動き)を把握。
  5. もちろん銀行ゆえに、返済能力を調査。

 

銀行員は「中小企業の決算書」をどう読んでいるのか – 日本実業出版社

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銀行マンは中小企業の決算書を信じていません。なぜなら、粉飾が容易であると知っているからです。たとえば在庫を水増しすれば、粗利を多く表現できます。役員報酬をわざと低くしても同じです。この場合、実際の報酬は、会社から役員への貸付や借入金の肩代り返済などに化けている場合があります。 その他、固定資産の償却不足やら、繰延資産の計上やら、期中の利益を操作する手段はたくさんあり、銀行からは厳しい目を向けられることになります。

 

また、利益の他に「借入金」も問題になります。通常、現預金との比較で判断しますが、業界平均として借入金が大きすぎるのも問題視されます。特に、債務超過状態は、会社として銀行に知られたくないことのひとつです。それゆえに、資産を過小評価することでごまかそうとします。たとえば、とても売れないような在庫。評価減せずにそのまま残しておくことも、債務超過を隠すための粉飾だったりします。

 

 

Q0223.わが社の帳簿が債務超過の状態になってしまいました。解消するにはどうすればよいでしょうか?|ビジネスQ&A|J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]

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ただし債務超過が即倒産ではありません。帳簿上の「債務超過」ではなく、(支払いに用いる)資金が尽きてしまったか否かが問題です。それでもこれを解消しないと、銀行はあらたな融資をしてくれません。本業で利益を上げることができず、売ってお金にする資産もなくなってしまっては、資金が尽きるのは時間の問題です。ゆえに「債務超過」は看過できないのです。そういう意味では、キャッシュフロー計算書の変化が重視されます。

 

中小企業の経営は、リスクが相対的に高いので、売上の着地予測を細かくやっておく必要があります。数字に弱い経営者でも、数字で失敗しないようにしなければなりません。たとえば、銀行への返済額について、元金と利息を分けて把握していれば、合格です。これは銀行側から渡される「返済予定表」を見ていれば分かることです。また利息はP/L上で費用計上されています。これら返済に向けての資金繰りをあらかじめ計画し、常に(着地を)予測しながら、実際の差異を確かめる工夫が必要です。そうすれば、対策を早めに打つことができます。「会社の財務体質とは、社長の借入返済に対する意識で決まる」と言われるのはそのためです。

 

プロが指南する「経営が危ない会社」の見分け方/リクナビNEXT[転職サイト]

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 まぁ、(究極的に言えば)銀行員が回避したいのは「倒産リスク」です。株式の売買で損をするということではなくて、会社が融資したお金を返せなくなる事態です。後者はまさに、「究極」的事態ですね。そうなると、財務諸表以前に、色々なところに異常が現れます。むしろ、銀行員からはそこに注目されているはずです。たとえば、営業や経理に対して、資金回収の命令や交渉が頻繁に飛んでいる。そのための会議がやたらと増えてしまう。優秀な営業マンや幹部人材が続いて辞めていく、などです。また経営者の出かける先が変わってしまったり、焦りや怒りが見受けられるようになっても、見透かされてしまうでしょう。つまり、財務の悪化は、業績の悪化や人材の不安定さとリンクしているものなのですね。

 

 

取引先を見る目。それを養うこと。そして「他山の石」にすること。これは経営のためのイロハかもしれません。