スーパー素材の「ゴアテックス」は万能ではない。その技術を知って、使いこなそう
ゴアテックス。その名前を聞いたことがあるでしょうか。「濡れない」「漏れない」という相矛盾する性質を備える素材のことです。簡単に言えば、この素材には無数の孔(あな)があり、液体の水は通さないが、気体の水(水蒸気)は通します。なぜなら、分子レベルで見た時の水は、クラスター(結合体)を形成しており、水蒸気よりはるかに大きい塊になっているからです。
ゴアテックスと独自構造で雨やムレに強く快適に履けるリーガルの春夏の新作シューズ|@DIME アットダイム
この素材は、「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」というポリマーに関係しています。その可能性を信じ、デュポン社を退社した二人が研究を続けていました。そして彼らの息子がそれを引き受け、「延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)」を発明。こうして今日のゴアテックスが誕生するのです。
この二つの写真を見て違いが分かりますか。両方ともプラ素材なのですが、ひとつは水を通していません。もうひとつは水こそ通していませんが、何やらコップが曇っているようです。つまり水蒸気は通しているのです。この後者こそがゴアテックス素材のすごさです。これを、透湿防水素材と言います。そう、そのままの名称です。
【ゴアテックス プロダクト】防水なのに、なぜ汗を発散するの? - ウェザーニュース
ゴアテックスは衣料素材として効果を発揮します。汗の蒸気を排出しながら、雨風は通さないのです。厚さ0.01mmで、1平方センチ当たり14億個以上の孔が開いているという同素材は、「どんな条件下でも体をドライに保つ」と言います。体温を奪われるのが怖いアウトドアにおいては、非常に頼もしい素材です。
しかし、その理屈を知っていれば、注意すべきことにも気づくはずです。まず、ゴアテックス素材は液体状態の汗を通しません。素材が肌にべったり張り付くような状態になると、汗を発散させることができなくなります。次に、スプレーや洗剤によっては、素材の孔を塞いでしまうことがあります。目で見えないだけに、注意書きには意識を向けておきたいものです。さらに、水は膜をつくります。素材の外側がずぶ濡れになってしまった場合、水の膜によって汗は発散できなくなります。つまり、この水膜を破る撥水性ある生地をゴアテックスの外側に使用しておくことも重要な要件になります。
あと、ゴアテックスについては誤解も多いそうです。そのひとつが「(中が)濡れてしまった」こと。これにはいくつかの原因が考えられるのですが、どこかに穴が開いてしまっている。ジッパーを最後まで上げていない。自分の汗が液体のまま体をべっちょり覆ってしまっている。たいていはこの三点のいずれかのようです。特に最後の点は、吸湿速乾のアンダーウェアを着ていれば防ぐことができます。さらに、冷たい岩や雪の上に座っていても同じです。汗が逃げられなくなっていますので、肌に残ってしまうのです。
同素材は非常に優れたものですが、知っておくべきことはたくさんありました。良いものを活かすも殺すも、ユーザーの認識次第のようです。