首都圏の主要路線に見る、東京の拡張性(前編)

 

首都圏には「主要」と呼ばれる路線が「19」あるそうです。行政区分としての、いわゆる首都圏とは、関東地方1都6県(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)と山梨県を含む地域にあたりますが、ここでは、東京都心部に通うための鉄道がある地域、それを首都圏鉄道路線の沿線だとしましょう。そこで本書では、その路線ごとに、発展性がずいぶん異なることを取り上げて、格差と表現しているようです。

 

首都圏とはどこ?関東地方との違いは?山梨は含まれるの? | 違いはねっと

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鉄道が混雑していることは、鉄道会社にとっては「恥」かもしれませんが、その沿線にとっては「魅力」だと言えるかもしれません。その点では、東西線総武線が一二位を争うのは興味深いです。なぜなら、この両路線が走っている地域は船橋に向けて、ほぼ重なるからです。

 

最新版!「首都圏の鉄道混雑率」ランキング | 通勤電車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

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まぁ、それでも具体的に言えば、混雑は鉄道会社の不備、人口増は街(沿線)の魅力。すなわち人口の増減を見れば、もっと分かるかもしれません。これで見れば、総武線沿線はまったくダメで、東西線もさほど上位には位置づけられていません。

 

首都圏の鉄道、沿線人口の増減率ランキング | 経営 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

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ところが、本書での評価は違います。総武線を「勝ち組」、東西線を「負け組」と分けています。それはなぜでしょうか。 勝ち組である総武線沿いには、集客施設がほとんどありません。それなのにこの乗降客数を誇るのは、成熟したベッドタウンをつないでいるからです。これと並行して東京を目指す京葉線沿線が成長著しいため、今後は今の地位もいつまで続くか分かりませんが、快速も走れないほど、ほとんどの駅が古くから開かれた場所です。これに対して「負け組」扱いされている東西線

 

実は、本書の点数づけは、以下の項目になるほど高得点です。

  1. ブランドタウンが多い。
  2. 接続路線が多い。
  3. 遅延が少ない。
  4. 混雑していない。
  5. 乗客が多い。
  6. 乗客が増えている。
  7. 運賃収入が多い。

 

東西線のように、顧客の利用(時間的にも、利用者の多い駅)が偏っていると、混雑や遅延がひどい割に、全体としては利用者数がそれほどではありません。中野駅方面ではけっこうガラガラ、日中(ラッシュアワー以外)の乗客数もシレています。本書の評点方法では「負け組」なのだそうです。個人的にはあまり納得できませんが(笑)。

 

その総武線東西線と平行して海沿いを走っているのが京葉線です。ランキングとしては「勝ち組」と「負け組」の境目に位置しています。利用者数や運賃収入はまだまだ小さい(総武線の3割ほどしかない)のですが、成長度合いは主要路線中にトップに立ちました。また、週末の集客施設としてディズニーランドの存在感は大きく、さらには幕張メッセなどを抱えていることもプラスに働きました。強いて言えば、海沿いを走っているため、風に弱い点がいまだに解消されていません。

 

 

このランキングの第一位に輝いたのが京急本線です。沿線住民が決して豊かでなく、ブランドタウンがたくさんあるわけでもありません。そんな路線が有望・優秀な理由は、羽田空港や新幹線、そしてリニアと接続し、泉岳寺から品川にかけての交通アクセスは抜群です。また、鉄道運営においても遅延がほとんどないなど、その技量も高く評価されています。しかもそれは駅間距離が短く、快速などを頻繁に走らせているという過密複雑ダイヤであるにも関わらず、です。

 

京急とくれば、同様の空港路線を抱える京成線。大部分は千葉の田舎を走っている路線ですが、私鉄の中では23区内の路線距離が最も長い。しかし、通勤客があまり多くないのでそれほど混みません。JRとの接続も、津田沼船橋、上野など、何とも中途半端。その不便性からか、沿線地価は非常に低く、庶民派路線と言えます。興味深いのは、あのディズニーランド(運営企業であるオリエンタルランド)は、京成グループであること。鉄道路線が実現しなかったのは誤算だったでしょう。

 

 

 ライバル対決と言えば、小田急と東急は完全かつ圧倒的な「勝ち組」でしょう。日本一の巨大ターミナル・新宿駅と、日本最大の観光地・箱根を結び、私鉄の中で運賃収入が最大(1113億円:2012年)なのにはうなずけます。激混みかつ遅延も多いのが欠点だが、ロマンスカーの優美な姿が同沿線のブランド価値を上げたのは間違いないでしょう。他方、東急東横線東急田園都市線とを合算してみると、運賃収入はほぼ小田急に並びます。言うまでもなく、田園調布・自由が丘・二子玉川・武蔵小杉に代表される沿線地価は突出しています。乗客数かつ成長性では東急側に上昇余地が大きく、個人的には東急側に軍配を挙げてしまいますね。

 

鉄道トリビア(68) 小田急、京王、京急、相鉄の路線は、すべて東急電鉄だった時期がある | マイナビニュース

1938年(昭和13)年に、政府が交通機関を整理統合する目的で「陸上交通事業調整法」を制定・・・この法律の下、東京横浜電鉄は合併を推進・・・1945(昭和20)年には、約333kmの広大な路線網が完成した。この状態を「大東急」と呼ぶ。

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