インバウンドがいつの間にか「越境」に変わる

タオバオで稼ぐ! 初心者から始める中国輸出の教科書

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中国向けの「越境」が熱いです。実は「爆買い」が収まりつつあるとの報道も出されていますが、実際には、現在、「爆買い」分すなわちインバウンド消費が、「越境EC」に置き換わっている過程なのです。聞いたことがあるかもしれませんが、中国人のインバウンド消費とは、旅行費用(宿泊・交通)そのものに対してのお土産消費が非常に高くなるのが特徴です。極端に言えば買い物をするために、仲間を代表して来日しているようなものなのです。このすざまじい消費力を、ネットに結びつけたのが、越境ECのサイトです。いくつも有名なサイトが登場しています。私たちにとっては、アリババグループのタオパオ(淘宝)やTmall(天猫)のことを聞いたことがあるかもしれません。

 

中国の越境ECは規制リスクはあるが市場規模が大きくシェア争いも面白い事になってる

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もともと、インバウンドが盛り上がる前後から、日本での「代購」(代理購入し、中国に国際便で直送する方法)が始まっていました。ネットにて商品情報の共有が速まり、グローバルでの物流革命によって配送負担が減ったことを受けての流れです。 しかしここには大きな問題があります。直送とは、規制逃れや課税逃れが横行しやすく、結果的に違法性が高まることは避けられないのです。そこで中国政府が繰り出した対抗策(2013年)は、保税区(越境EC総合試験区)方式でした。まず、日本からの商品を、税関手続きを経ないまま、中国内の保税区倉庫に入れることができます。しかも、そこから中国国内への出荷には、簡素な手続きと優遇税率が課されるだけ。この便利なルートが定着すれば、わざわざリスクを冒して、直送をする必要がなくなります。さらに(2016年)、一般貿易とのバランスを図りながら、越境ECのルートを拡大させるための税制改も行われました。直近の措置は、一見すると、越境ECへの増税・規制強化にも見えましたが、その実、「代購」やインバウンドを抑制することが本当の狙いです。

 

 

中国モール向け越境EC進出支援サービス│株式会社イー・エージェンシー

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中国の新越境EC制度、通関と税制の変更内容は知ってる? 今後の見通しも徹底解説 | ネットショップ担当者フォーラム

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繰り返しになりますが、「保税スキームを活用した物流は、従来の直送方式(日本から中国に個別配送する方法)や正規通関商品(一般貿易方式)に比べ、コスト面や配送スピードなどで圧倒的な優位性」があります。しかし直近の新制度が招いた一時的な混乱は、かなり不評でした。そもそも、新制度の目的は「行郵税(個人が海外で買ってきたものや個人輸入品に対して課税する税金)による課税スキームから、一般貿易と同じスキームで輸入増値税(流通段階で商品に対して課す税金、一部商品は消費税も課す)を課す仕組みに変更」することです。詳しくは上記リンクのサイトをご確認ください。そこでやや困惑させられたのは、越境品目が、一般貿易と同じ制限を受けてしまったことです。俗に言われる管理強化なのか、当初の目論見通りの越境強化なのか、首をかしげる人も出てきていますが、筆者は、とりあえず、越境重視の中国政府の姿勢を信じたいと思います。この新制度は2019年全面施行となっていまして、現(本稿執筆)時点では、猶予期間とされているそうです。

 

 

中国越境EC新動向―――越境O2O実体店舗が台頭 – FRANK&いつも.(フランク&いつも)ホーム |中国EC運営代行NO.1

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越境と言えば、面白い試みもあります。あのアリババの本拠地・杭州では、世界初の越境O2O実体店舗がオープンしました。画期的なのは、本来保税区にあるはずの商品が、杭州市内の実店舗に並んでいることです。 店内の商品はその場で見たり触ったりできます。そしてそれをそのままレジに持っていくことができます。すごいのは、「商品のQRコードを読み取るだけで、オンライン注文、身分検証、お支払、三単合一(三単合一とは、<注文情報><支払い情報><物流情報>の3つの情報がデータ連携された通関システムのこと)、EC税金加算など一連の動作が行われ」、10分もかからず、購入の手続きが終わってしまうことです。

 

この形態が、今後各地に普及するとはさすがに思いませんが、保税区は中国に10を越えて存在しますので、その周辺に、業者を限定する前提で拡大する可能性はあります。非常に面白い取り組みだと思います。中国らしい新たな社会実験が果敢に始められています。