ややこしい『化粧品』の、最低限知っておきたいこと。

化粧品成分表示のかんたん読み方手帳

化粧品成分表示のかんたん読み方手帳

 

 

本書を読んでいくと、単純な理解として、一部のメディアで誇大に報道されていることは、おおよそ間違えていることが多いようです。「(この化粧品は)危ない」などの文言は、今の日本の仕組みでは、十分に監督できている範囲のことと言えそうです。しかし、そのメディアの文言にメーカーが悪のみしてしまうと、消費者側の誤解にブレーキがかかりません。たとえば、「ノン~」とか「無添加」とか、特定の成分が使われていないという表現は、その成分が入っていると危険だという認識から来ています。しかしそれは、対策商品のできたメーカーが大々的に宣伝をしがちです。ついこの間までは、その成分を含んだ商品を出していたにも関わらず、です。

 

 

塩を大量に食すれば、人間は死んでしまいますね。それと同じレベルの話も、化粧品等の成分では安易に不安視されがちです。また「動物由来」がダメで、「植物由来」が礼賛されたり、「天然・オーガニック」がよくて、「合成・ケミカル」がダメとされたり、ちょっと極端な論法が広まってしまっているようです。 

 

 

http://www.asahi.com/topics/images/TKY201006290134.jpg

 医薬部外品 - asahi.com(朝日新聞社)トピックス

 

このように、化粧品成分表示というのは、「ワケわからない」ものになってしまっています。一つの目安としては、『医薬部外品』などの分類について知っておくといいでしょう。簡単に言えば、『医薬品』は治療目的で使われます。『化粧品』は髪や皮膚、爪の手入れ、そして保護に用いられます。両者の違いは明確で、人体への作用が大きいか否か、取り扱いに注意が必要か否かです。ただし厄介なのは、日本にその中間と言われる『医薬部外品』(別名、『薬用化粧品』)があることです。『医薬部外品』の製造は、事業者としてだけではなく、個々の製品も審査を受け承認を得ることが必要です。その有効成分を厚生労働省に申請し、安全性や安定性に関する膨大なデータを添付しなければなりません。そして一度許可の前例が出れば、その成分に関しては許可がおりやすいともされています。

 

医薬部外品とは? - 石鹸百科

https://www.live-science.com/images/honkan/basic/p_2010004.jpg

 

あと、表示についても差異があります。『化粧品』は、表現できる効果効能がかなり限られています。一方、『医薬部外品』は、おだやかな薬理作用が認められた成分が配合されているので、その成分について許可を得た有効性を表示できます。しかし、いずれにしても(『医薬品』ではないので)治療を匂わせるような劇的な効果を表示してしまってはアウトです。

 

【薬用】は医薬品じゃないの?<医薬品>と<医薬部外品>の違い | 東京ガス ウチコト

https://tguchi.s3.amazonaws.com/uploads/topic_item/image/94369/retina_iyaku.jpg

 

『薬用化粧品(医薬部外品)』が治療目的でないとしたら、一体何が目的でしょうか。概括的に言えば、【防止・衛生・予防】です。認められた「肌荒れ」「にきびを防ぐ」「皮膚の殺菌」などの効果を訴求することができます。上記の表で見るとわかりやすいですね。残念ながら、曖昧な『薬用化粧品』という分類は、ヨーロッパなどのいくつかの国にはありません。

 

最後に、成分表示に関して記載しておきましょう。『化粧品』については、2001年の薬事法改正以降、全成分表示が義務付けられました。しかも配合量の多い順に記載されます。したがって、化粧品成分の先頭に「水」と書かれることもあるのですね。着色剤があれば末尾に記載されます。意外なことですが、『医薬部外品』については全成分表示の義務がありません。むしろ国際基準に合わせることが優先されました。有効成分を分けて記載したり、表示指定成分についても定められていたり、一応、厳しい監視下に置かれていると理解していいでしょう。

 

拡大する医薬部外品市場「3つの理由」|意外に知らない医薬部外品の製造・OEM・ODM・PBのこと

 

https://www.e-expo.net/contents/c/oem01/img/market_point.gif

 

近年は『医薬部外品』が増えていると言います。医薬部外品の市場は、2013年統計で約1兆0,785億円(富士経済調べ)、現在はもっと多いでしょう。何より、OEM企業が増えたことで、この領域に多くの企業が参加しやすくなったのです。また『医薬品』の一部も、規制緩和によって、この領域に移されています。何にせよ、消費者側がもっと理解しておく必要がありそうですね。