「がん」の早期発見で気になる、そもそも論。「癌はなぜ?」

 

 長い航海を終えた船は、点検・修繕するために、船舶を保守する場所が必要です。これを「ドック」と呼びます。オランダ語だそうです。人生も同じです。体を定期的に点検するために、一日なり二日なり、体をドック(病院)に預け、次の航海に備える。この人間ドックは、正確な統計はありませんが、健康診断を含めて考えた場合の受診率はかなり高いものがあります。

 

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漫画で解説:人間ドックで健康チェックの巻 - 毎日新聞

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今日の日本人の死亡原因第一位は「悪性新生物」。何やら聞き慣れない名前です。死亡者数でみると、一年間に約34万人。これは全死亡人口114万人の3割を占めるものです。では「悪性新生物」とは何でしょうか。実はこれ、癌(がん)のことです。星ヶ丘医療センターのサイト説明によると、「がん」は主に臨床で、「悪性腫瘍」は主に病理学で、「悪性新生物」は主に統計学で使われるのだそうです。

 

 

死亡率と主な原因とは? - 死亡保険の基礎知識 | 死亡保険 | 生命保険の比較ならi保険

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「がん」については面白いサイト(内容は深刻です・・・)がたくさんありますので、ぜひググってみてください。ここではほんの少しだけ、種々のサイトを引用します。細胞検査士会のサイトによると、「がん」をカニにたとえたのは、古代ギリシアの医師・ヒポクラテス、つまり「医学の父」と言われる人物だそうです。「がん」は英語やドイツ語でもカニ(蟹)に由来します。これは、「がん」化した組織を見た同氏が、手足を伸ばしたカニのように見えたのだとか。体の中の、上皮や筋肉が悪性化したものを、私たちは「がん」と呼んでいますが、厳密には部位によって表現が変わります。これら共通の呼称が「腫瘍」であり、悪性化したものが俗に「がん」とされています。

 

 

がん(癌) (09-02-05-03) - ATOMICA -

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実は、この「がん」化という出来事は、私たちの体の中で日々起こっているのだそうです。毎日生まれてくるそれら「がん」を、私たちの免疫機構が退治してくれています。恐ろしいのは、この「がん」細胞を私たち人間が発見できるのは、ある程度大きくなってからのこと。しかもそれは10年以上をかけて育ってきたものらしいです。ゆえに、私たち自身の免疫力が重要になってくるのですが、いわゆる健康な生活(バランスの摂れた食事、十分な睡眠、適度な運動など、規則正しい生活)が崩れてくると、免疫力の弱体化、ひいてはがん細胞の増殖を招くというわけです。

 

がんと免疫力のはなし|がんの先進医療|蕗書房

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人間ドックに話を戻しますが、日本人の二人にひとりががんになる時代、「早期発見に人間ドックは欠かせない」という宣伝文句につながります。しかし、がんと言っても、その対象部位は多岐に渡り、死亡率の順位で見ると、「肺」「大腸」「胃」「膵臓」「肝臓」と、有名人の死亡原因でよく聞く臓器名が並びます。特に「大腸がん」の伸びが大きいですね。近年登場した最新検査手法「PET-CT」では、高い精度で全身のがんリスクを発見できます。値段も徐々に下がっており、10万円を切るところだとか。残念ながらこの検査は、通常の健康診断には含まれておらず、保険の適用外です。

 

 

www.newsweekjapan.jp

 

個人的な興味は、もちろん自分の体のことが第一ですが、その潜在リスクが見つかってしまうのも怖いものですね。本稿では、学術的な話題にちょっと逃げて締めましょう。上記のニューズウィークの記事にもある通り、がん研究には諸説入り乱れており、そのひとつに、物理学者が提唱する考え方があります。「なぜ癌は存在するのか」、よくよく考えてみると、これは多細胞生物全般に見られる現象なのだそうです。ところが「がん」そのものには、単細胞生物とよく似た習性が見られます。これが何を意味するのか。物理学者の見解はこうです。進化の過程で生じた「退行現象」ではないか、と。さらに同氏は、「ハードウエアに不具合が起きたコンピューターがセーフモードで起動するのに似ている」とも言います。つまり、がんは遺伝子エラーで誕生することが知られていますが、エラーによって細胞が単細胞生物化してしまうというのです。そしてそのおかしくなった細胞は、より増殖に特化できる状態になってしまいます。生命の皮肉な防衛反応だということになりますね。進化にも関係する、奥の深い話でした。