日本企業の新しい教科書「ユニクロ」

日本一の「実行力」部隊 ユニクロで学んだ「巻き込み」仕事術

日本一の「実行力」部隊 ユニクロで学んだ「巻き込み」仕事術

 

 

ユニクロの強さの秘密。それが分かるヒントを本書は紹介してくれています。経営トップの柳井氏に「すべてを変えてください」と言われた新任・女性マネージャー(著者)が、他社の成功事例や費用対効果の分析をまとめて柳井氏の指示を仰ぎに行った時の話。柳井氏はひと言、「で?僕にどうしてほしいの?」。ユニクロでの提案とは、具体的な問題解決策や実際にやるべきことを形にして見せること。経営陣たちには、何をしてほしいのかをきちんと説明できること。これらができて当たり前なのだそうです。そうでなければ、「評論家のようなことは言わないでください」と叱られるだけ。当時のユニクロは、経営陣が見えるところにいて、社員個々の机にパーテーションなどなく、フロアを見渡せば、誰にでも声をかけることができました。ただし、みんな忙しいので、「走りながら考える」、これがユニクロ流なのです。

 

 

「ブラック」とも揶揄されるユニクロ。その本社には、店舗と営業系を除いてわずか200名。著者が入社した2004年のユニクロはすでに3000億円ある大企業でした。当時の決算報告によると、連結・正社員数は1822名、パート・アルバイトを合わせれば合計で10711名。店舗数は637店(売場面積の合計は10.8万坪)になっていました。一店舗当たりの売上高約5億円(売場平均面積は168坪)を、従業員・パート等17名で回していた計算です。今は店舗が大きくなっていて(平均279坪)、当時とは比べるべくもないですが、一人当たりの責任面積では効率がさらに高まっています。さすがはユニクロです。

  • 国内店舗数640店(2004年度)→798店(2017年度)で計算。
  • 現場稼働人員11,000名(2004年度)→24,500名(2017年度)で計算。
  • 国内売場面積355,189m2(2004年度)→737461m2(2017年度)で計算。

 

参照:バックナンバー | FAST RETAILING CO., LTD.

 

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本書で何度も出てくる「巻き込む」という表現ですが、昔で言うところの、いわゆる根回しですね。それが今日風にスマートに表現されると、「周囲を巻き込んでいく」となります。特に、全社的な動きになる場合、部下・他部門管理職・上司・経営層を動かしていかなくてはなりません。ユニクロのような優れた企業になると、中間管理職が、壁を作らず、トップをうまく利用しながら、会社全体の協力体制を取り付けていく。そんな風になっていくのでしょう。特に、企業サイズが小さかったり、中心商品が少なかったりする間は、トップダウンだけで物事が進みました。しかし、当時のユニクロの中心商品・フリースのブーム(=満塁ホームラン)が一段落し、これから組織としてヒット商品を量産していかなくてはならない段階では、次世代を担う新しいリーダーたちが活躍する必要がありました。本書の著者(田中氏)の振る舞いが、まさにひとつの好例だったのだと感じます。

 

なぜ、レンタルビデオの貸出期間は1週間なのか? | ビジネスジャーナル

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ユニクロのDNA」という表現が非常にたくさん出てきますが、要はこういうことです。トップの柳井氏が発するメッセージや考え方が、組織の隅々や社員の意識の中に、たびたび浮揚してくるという意味です。

  • (トップが)「やる」と言ったら、必ずやる。
  • (幹部に)考えて考えて考え抜くまで、何度でもチャレンジして。
  • 段取り(=「前始末」)こそ、徹底して取り組むべきもの。
  • スピードこそ生命線だとして、走りながら考える。
  • 発信者が伝え、取り仕切る責任を有する。

 

その他、本書にはマネージャーとして仲間と接する時に、有効な「18」のフレーズを紹介しています。その立場にある方は一度目を通されることをお薦めします。どのフレーズも「当たり前」の表現ではあるのですが、実際にできている人はわずかだと思います。たとえば、ひと通り説明をして「(あなたは)どうしたらいいと思いますか」と最後に尋ねてみること。これには、相手が自分の言葉でこちらの説明を口にするという期待も含まれています。そもそもは、こちらが命令をしたようなことでも、相手の言葉にさせることで、おのずと責任を分担してくれた状態になってくれます。

 

 

ユニクロが中国進出した日系流通業で「一人勝ち」した理由 | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン

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ユニクロの中華圏での実績を見ると、売上高は前期比4.1%増の3464億円、営業利益は同37.0%増の501億円を確保した。中国では2年後までに現在の592店から1000店体制を目指す。

 

チームづくりの強さが発揮されているのは、日本より中国だと思います。ビジネスモデルとか戦略論とかばかりが誌面に踊りますが、ユニクロの本当の強さは現場主義だと思います。お金と時間を投じれば、新商品が開発され、きれいな店舗も登場し、派手な宣伝もできるでしょう。しかし、それらの一つ一つを猛スピードで具現化し、現場を高水準で維持できるのは、意識の高いリーダーがそれぞれの現場を回しているからです。高圧の職場環境ですから、ユニクロには「ブラック企業」論も伴いがちですが、嫌なら辞めてしまえばいいでしょう。自分を成長させたいなら同社に参加し、学べるだけ学ぶ。まさに、日本流の新しい企業モデルだと思って、色々勉強したいものですね。