ひとり勝ちドラッグストア、曲がり角に差し掛かる

 

ドラッグストアという統計カテゴリーが登場したのは、2002年以降です。 その市場規模は、日本チェーンドラッグストア協会の発表によると、2017年に前年比5.5%増の6兆8504億円に達しました(431社集計、18000店舗)。10兆円産業を目指して拡大を続けていますが、成長ペースはやや落ちてきたようです。そうは言っても、前年には百貨店をすでに上回り、コンビニを猛追しています。食料品や日常品を廉価に販売して「客寄せ」にする、そして利益は医薬品や化粧品で稼ぐという仕組みです。特に調剤事業は大きな伸びを示しており、その調剤市場におけるドラッグストアの存在感もまだ一割程度です。

 

  

eb.store.nikkei.com

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上記表示は2017年版ですね。最新版は書店でお求めください。ざっと見れば、マツキヨのトップに迫っているのが、ウエルシア(イオン系)です。積極的なM&Aや提携を仕掛けており、グループ連結で見ればイオン系がすでに業界トップです。長年トップに君臨したマツキヨは、都心駅前一等地の積極出店で、業界の影響力拡大を引っ張ってきました。しかし、資本力をもったイオン系のツルハの他に、九州からコスモス薬品、そして首都圏のサンドラッグや中部・関西のスギなど、まさに戦国時代たけなわという様相を呈しています。そこで天下を狙う試みも本格化し、ウエルシアとツルハがイオンを介して経営統合を模索する可能性もあるのだそうです。現在両者は業界一位をかけての熾烈な競争を続けていますが、イオンはツルハの大株主というポジションでもあり、いつでも統合が仕掛けられる位置にあります。両者を合わせれば全国3300店舗、単独販売額1.2兆円という突出した存在になります。

 

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あの大前研一氏が、この業界を丁寧に分析してくれていますので参考にしてみましょう。同氏のこのシリーズは、私も買いましたが、必見です。もしも、戦国乱世のドラッグストアのにあって、首位を陥落したマツキヨがあなたの立ち位置なら、この後どう動きますかという設定です。同業界はいまだに成長を続けていますが、その実、企業数の減少(=大手の寡占化)と開店速度の低下を受け、いよいよ「食い合い」が始まるとの見方が強まっています。この傾向は小売全般で見られるものですが、たとえばコンビニ上位三社で8割を占めるのに対し、ドラッグストアはその8割に21社がひしめています。寡占化が始まったばかりと言えるのでしょう。

 

Vol.30 もしも、あなたが「マツモトキヨシホールディングスの社長」ならば | The Essence of Business Breakthrough

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圧倒的な存在感のイオングループは共同購買にも動いていますが、マツキヨのみならず、ココカラファイン(WINグループ)やサンドラッグなども、グループ化を進めています。マツキヨの特徴は都心型店舗のため、化粧品が全体の4割、医薬品が3割を占めるのだそうです。これは、食品と日用品を主力とする地方のドラッグストアと大きく異なります。しかも店舗は首都圏に偏っていますので、主戦場で勝敗を決するのか、地方に打って出るのか、これひとつでも戦略判断の重要なひとつでしょう。ちなみに同社の中間報告書に書かれているのは、「薬局としての専門性」を高め、「オムニチャネルの活用」で5100万人の会員データを活かして、「ドミナントでの出店」攻勢をかけたい、とのこと。いずれも、現状では苦戦をしている点ばかりと思えるのは私だけでしょうか。ぜひ、厳しい競争環境からの逆転を狙う同社の試みに学んでみたいですね。

 

 

イオンも瀕死。ドラッグストアに客を奪われ没落する大手スーパー - グノシー

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他方、攻勢を強めるイオン系ですが、それはイオンの悩みの種でもあります。10年以上低迷しているスーパーマーケット業界にあって、巨大面積をもつイオンモールを全国に建設。しかし、それが赤字の原因になっています。なぜなら休日はどこもいっぱいですが、平日はガラガラになるからです。その客を奪われているひとつがドラッグストアです。特に地方では、日用品・食品を重視するドラッグストアが圧倒的です。したがって、イオンとしては将来の布石としてドラッグストアに傾倒していかねばならない理由もありました。

 

ドラッグ店 次の一手は? 接客に力、安売りから脱皮|出世ナビ|NIKKEI STYLE

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 ここでのまとめとしますが、ドラッグストアはその名の通り、やっぱり調剤あってこそです。冒頭に書きましたが、お隣の調剤薬局市場がとても大きな市場で、中小規模の5万店を有します。ドラッグストアがそちらに伸びる余地はまだまだあります。そのドラッグストアには定義があり、「医薬品、化粧品が売上構成比の3割以上」「健康及び美容に関する各種商品が中心」であり、「店舗全体の50%以上がセルフサービス方式」での販売をする小売事業者のことを指します。これらは定義ですが、実際の開業では、ハードルが下がりました。2009年の改正薬事法によって、薬剤師を置く必要がなくなったのです(「第2類医薬品」「第3類医薬品」の販売に関して)。登録だけで済みます。したがって今後、少し長いスパンで見た時には、今のドラッグストア市場にも、新しい参入者が出てくるかもしれませんね。