自分の側にある答えを呼び覚ましてくれる人々

<特別版>年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの対話術

<特別版>年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの対話術

 

 

コンサルタントとして儲けたいという視点で読んだのではありません。一流と呼ばれるコンサルの方々がどのような対話で、クライアントからの情報を引き出しているのか知りたかったからです。本書の半分くらいはそれを示した内容です。今日の世の中は、情報の収集にかかる手間が著しく減りました。それゆえに、情報をもとに意思決定をするための判断基準こそが重要になります。特に、相手が見落としていた盲点に気づかせるのが、対話におけるコンサルタントの目標となるそうです。

 

 

対話には、何を聞くか何を言うかの前に、どのような状況(「場」)で対話をするかが意外と重要になります。著者はそれを「安心・安全・ポジティブな場」と表現していますが、逆に言えば、世の中に対話には、そのような恵まれた場があまりないのですね。安心と言って、相手が心を許すには、こちらが色々尋ねることの「正当性」が必要です。安全に関しても、内部情報をこちらに渡して問題がないことを示したいところです。ポジティブとは、相手の取り組みを評価して、相手の悩みに前向きな示唆を出すこと。この三点に配慮することで、相手はこちらを信頼し始めます。特に、その相手が経営者であればなおさらです。

 

コンサルタントがよく使う言葉は「本質」です。その本質をつかみつつ、本書ではさらに言語化についても強調しています。相手とのやりとりで、相手に通じそうなボキャブラリーを自分のものにし、それを「本質」の表現に使うのです。さてその「本質」ですが、私なりに答えを用意しました。世の中には、別に、本質という正解があるわけではありません。目に見えているものだけを信じるな、という教えだと私は解釈しています。私たちが、視点を移していった時、目に見える画像は変わります。同じモノでも角度が変われば、ずいぶんと違って見えるものです。それぞれの見え方については、「事実」をあぶり出します。そしてそれら推定「事実」をつなげてひとつのストーリーを組み立てる。それを、私は本質と呼びたいですね。

 

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コンサルタントは経営者と対話しながら、「正解」を導き出そうとする職業です。経営者の足元には実にたくさんの情報が眠っています。おそらく、本人すら意識できないでいたでしょう。これを掘り起こす、そうは言っても警察の事情徴収のように、「詰められる」質問が好きな人はいないはずです。本書によると、心を開いてもらうための、前置きトークが重要なのだそうです。 本書とはやや異なりますが、私なりの前置きトークへの理解を紹介しておきます。

  1. 自分の立場・態度を明らかにしておく。
    「初歩的なことも敢えてお聞きします」
    「もしかしたらプライベートに踏み込んだことまでお聞きします」
  2. 相手に考える十分な時間・覚悟を示す。
    「今の質問の意図は分かりますか」
    「もしかすると耳の痛い話になるかもしれませんが、確認させてください」
  3. 相手が考えるヒント(本書では「誘い水」)を与える。
    「なぜ会社を作られたんですか。実は、私の場合はね、単純明快なんです」
    「売上アップの方法にはいくつかありますが、それぞれ整理してみませんか」

 

当事者では、現場に浸かりすぎて何も見えなくなった人々てす。その狭くなった視点を開放してやるのが、コンサルタントの役割なのでしょう。この職業がこんなに必要とされる理由がそこにあると思います。もっとも、ここで言いたいのは、コンサルの方々を儲けさせようという意味ではありません。私たち自身も、事業の「ぬかるみ」から一歩離れて、全体を俯瞰するくらいの余裕を持ちませんか。優秀なコンサルとは、本書の著者も書いていますが、みずからの知見を押し付けてくるようなことはしません。こちらに気付きを与えてくれるよう誘導してくれるものです。つまり、答えは私たち自身の側にあるのかもしれません。