経営改善とはどれだけ、そのすべてに着手できるかです

企業再生のための 経営改善計画の立て方(第2版)

企業再生のための 経営改善計画の立て方(第2版)

 

 

 経営とは「何を」「どうやる」か考えることです。前者はモノ、後者はヒト。前者は事業のテーマで、後者は組織の課題です。この二つを両軸にして、様々なバランスを図っていくことが経営には求められます。また、ヒトとモノは見えますが、カネは見えづらいものです。事業や組織に投じるものはカネですが、それは結果でもあります。カネを回しながら、組織を成長させ、事業を創出します。さらに、情報になるとまったく見えません。環境や顧客、市場のことなどは、すべて情報です。これらをきっちりと把握しながら、適切なポジションを目指さなければなりません。

 

 

とまぁ、ここまではありふれたことばかり言いましたが、往々にして事業運営はうまくいかないものです。それでも結果として「売上の成長」さえあれば、ほとんどの問題は問題になりませんが、逆に言えば、うまくいけている企業の方が少数派だと思います。したがって、市場環境(外部)と経営実態(内部)を把握し、ひとつずつ解決していかねばなりません。下記の6つで確かめてみましょう。

  1. 「顧客」は誰で、彼らとのつながりや彼らへのアクセスはどうか。
  2. 提供できる「価値」は本物で、明確に伝えられているか。
  3. 目標とする価値を実現できるだけの「ノウハウ」を備えているか。
  4. 「コスト競争力」、すなわち十分な効率・収益性を実現できるか。
  5. 私たちにとって一番大切なのは、「商品を開発」し続ける意思です。
  6. 顧客との交わり方、すなわちマーケティングが最適化できているか。

 

数字については、収益性・安全性・生産性とありますが、現在より改善し続けなければならない点で終わりはありません。特に「安全性」は、キャッシュフローを同時に見ながら、問題箇所を必ず解決していきます。短期の存続条件を確認した上で、一番重要になってくるのが、本業の成長性です。とりあえず会社が成長し続けてさえいれば、多くの課題を改善していく時間が稼げます。本書では、常識的な「事業ポートフォリオ」や、「SWOT分析」「ABC分析」のフレームワークが挙げられていますが、私個人が推奨したいのは、顧客リスト(B2B)や顧客がいるはずのチャネル分析(C2C)です。商品よりも顧客を出発点にした方が、売上につなげるまでの時間が短くすむからです。特に、販売チャネル分析については、地域・顧客属性・販売時間帯に至るまで把握しておきたいものです。ターゲットを明確にしてこそ、商品をどう変えるかという議論につながります。

 

他方で、組織内部に起因する問題も多々あります。すべてを不況あるいは環境のせいにするなどは、仕組みが陳腐化し、経営幹部が打ち手を見失った結果、起こる現象です。また、あろうことか、顧客を責める幹部さえ出てくることがあります。これは「身勝手」な顧客に対する苛立ちでもあるわけですが、そんな不良客を捨てられない自分たちにこそ問題があることを認識すべきです。その他、組織風土が保守的で新しい挑戦ができなかったり、意思決定から逃げる風潮があったり、無意味な会議がダラダラと続けられていたりして、組織としての末期症状に至っていると、商品どころの話ではありませんね。こうした時は、私の経験から次の打ち手を考えるべきです。簡単に言えば、実行すべき課題に焦点を作り、そこに経営資源を集中させることです。

  • 危機意識を共有し、最悪のシナリオを意識させる。
  • 「とりあえず」の目標・方針を決めて、迷いなく実施する。
  • 権限を現場に下ろし、徹底した情報収集を図る。
  • ムダな会議は廃して、意思決定者が現場に出向く。
  • 「とにかく」顧客を拾い出すことに全力を上げる。
  • 同時に、商品をシンプルにして、絶対売れるモノを一つでも見出す。
  • 提携でも、取捨選択でも、簡略化でもいいので経営資源の効率さを高める。

 

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 「戦略フレームワーク」でゴチャゴチャと色々なことを学ぶと思います。すべて役に立つことばかりですが、私が一番重視するのは、『3つの戦略』と呼ばれるものです。実はこれ、本義的には三類型なのですが、私的にはたったひとつのことを示しています。いかなる企業であれ、三つとも同時達成しなければならないのだと思います。ユニクロが「コスト競争力」を重視したと言われますが、まったく違います。ベーシックアイテムに狙いを定めつつ、その都度、高品質とコスト競争力を同時実現。成長戦略を駆使して、猛スピードで小売店舗を全国展開させました。同時に、(東レとの)素材開発を怠らなかったり、製造者としての役割を年々極めたり、イメージ戦略にて「格好良くて安い」を実現させたり、さらには腹のすわった海外戦略だったりで、ついに成功を収めます。ユニクロは意外なまでに、やりきれるすべてのことに着手していたのです。なお、「コスト競争力」と、は単に安い商品を創るという意味ではありません。5,000円前後のユニクロにしても、何十万円以上の高級品を売っているバーバリにしても、価値に対しての費用は抑えるにこしたことがありません。

 

ユニクロ、ジーユーで世界大手になったファーストリテイリングを大解剖 ビジネスモデル、歴史、業績・株価、採用、柳井正氏まで | 投信1 | 1からはじめる初心者にやさしい投資信託入門

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最後に、当時、ユニクロの快進撃を支えた沢田氏のコメントで締めくくっておきます。「フリースブームが続いたのも、みんながいろいろなことを真剣に考えて良い商品にしていこう、良い接客をしていこうと取り組んだからだと思います」。そう実は、フリースの売上は結構長く、続いていたのです。生産・販売・宣伝・出店そのすべてをうまく改善し続けていたからです。ひとつふたつのフレームワークや戦略で、会社が立ち直るわけではありません。あしからず。