マーケティングができている商品は意外と少ない

ドリルを売るには穴を売れ

ドリルを売るには穴を売れ

 

 

本書は、「入門」と書かれている通り、本当に初歩的な内容を、物語なども加えて説明しています。 マーケティングを説明するには、この言葉を知ったつもりになっている人を対象にするといいでしょう。ベネフィット、セグメンテーション、差別化、4P等、これらの言葉が出てくる以上、それほど深みのある内容ではありません。総括的に言えば、まず、顧客が「価値」を感じる部分を鮮明にし、それを一番敏感に感じ取ってくれる人を選びます。その上で個々のディテールを詰め上げ、「他にはない商品」のように仕立てて販売することです。なんか、お客様を騙しているような表現ですね。

 

 

本書のタイトルは洗練されています。「ドリルを売るには穴を売れ」と、見事に本質を語っています。どのような穴を開けたがっているお客様を探せばいいのか、そしてどのような穴だと伝えればいいのか、さらに何をすればこの穴が手に入るのか。この三点をシナリオとしてまとめればいいのです。ドリルは二の次というわけです。

 

私が考えるマーケティングの本質、それは一番商品になることです。二番では絶対ダメです。「一番」になるように、商品の販売条件(マーケティング)を組み直します。私自身が商品を選ぶ時、二番目の商品を買うことはありません。たとえば、「この価格帯で一番いい商品」とか、「この近所で一番の商品」とか、さらには「今すぐ買える中での一番の選択肢」とか。様々な条件のもとで、一番が私に選ばれます。言い換えると、4Pの制約のもとなら、きっと一番のはずという商品だったら売れるわけです。

  • 価格やお得感、
  • 商品の使い勝手や品質、
  • 売っている場所や取引の方法
  • 情報・イメージ・雰囲気

 

そもそもお客様の側は心理的な判断基準を持っています。だいたいは以下の四点にあてはまると思います。自分のお金を払うという決断は、それなりの理由があるのです。

  1. コスパ;価格・品質のどちらかを求める。
  2. 楽ちん;手間・努力等を省ける。
  3. 見た目;デザインや外観、高級さ、表面スペックでひかれる。
  4. リピータ;安心・個性・習慣でこだわりを感じる。

 

転職を決断するその前に!その選択は戦略的ですか?|スキルアップレッスン|MBAのグロービス経営大学院

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他方、売る側も参入する判断基準を有します。簡潔に言えば儲かるか否かですが、念のために本書の表現を借りて整理しておきます。いわゆる3Cの角度からの分類ですね。マーケティングの一番の肝は、自分たちが手にできるであろう市場のニーズを、正確に把握することです。そうすれば、いくらの資金を投じるかが決まります。ターゲットが明確になり、その人々の期待を強く引き出し、他社商品との選択で迷わせない。そのためのビジネス全体の仕組みを決めていくことがまさに「マーケティング」です。

  1. 市場の(潜在的な)規模
  2. 競合の激しさと自社の強み
  3. 商品価値の切迫さ・必要性

 

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 「マーケティングの肝」のことを、差別化とも言います。上記引用事例ではうまくまとめられていますが、ターゲットを決め、競合との間でのポジションニングを定め、フォーカスするものを絞り出す。ここで圧倒的な一番を得られれば、おのずとブランド(顧客からの信頼と期待を集める商品)になっていくわけです。そうは言っても、今日にの時代、自分ができて他社ができないことなど早々ありません。いわゆる体力(資金力・技術力・展開力)がない平凡な中小企業であった場合、下記の三点に注力してみてはいかがでしょうか。

  1. スピード:とにかく早く着手。
  2. 限定:目標の客層を絞って徹底サービス。
  3. 口コミ・リピート:満足体験こそ最高の広告。

 

本書の表現を借りつつ、マーケティングの基礎を概観してみましたが、難しいカタカナ・英数字表現よりは、平易な言葉で見直した方がいいですね。市場にいる顧客と競合にもまれながら、みずからの強さ(差別化要素)を創り出していくのが、まさに「マーケティング」ですが、買い手(顧客)の立場になってみれば、思ったほど顧みられていないことが分かります。なぜなら、私たち一人一人も「顧客」だからで、心から満足できた経験はそれほどないでしょう。そう考えると、まだまだここを極める余地はありそうですね。