コンサルの思考法から学べること

コンサル一年目が学ぶこと

コンサル一年目が学ぶこと

 

 

「雲雨傘の論理」。黒っぽい雲がでてきたので、雨が降り出しそうだから、傘をもっていったほうがいい。そんな聞いたことのあるようなフレーズですが、これには事実と解釈とアクションが含まれています。空に雲があるのは事実です。黒も、事実っぽいです。これは見る時間帯や角度によって変わるかもしれません。黒い雲は雨をもたらす、とはこれまでに知られた経験則のようなものでしょう。雨に対してはとりあえず傘という手段を推薦しています。こうした「まどろっこしい」言い方をしているのは、このフレーズが深い考えに基いていないからです。私たちがついついやってしまいがちなミスとはこのようなフレーズを何の疑問や検証もなしに使ってしまうことです。

 

 

世の中には、大量のレポートを持ってきて、「雲がある」とだけ書いている人がいます。観察レポートとしてはこれでもいいのですが、単なるコピペ資料の山ではその意義も薄れてしまうでしょう。「黒い雲」は、本当に黒なのか、なぜ黒なのか、そのメカニズムを理解しようと試みればこそ、その後の問題である「黒い雲は雨を降らせやすい」の問いに向き合うことができます。また雨と言っても実は様々で、普通の傘がいいのか、特殊な傘が必要なのか、それともレインコートの方が適しているのか、問題と対策の適否を判断しなければなりません。

 

 

「空・雨・傘」フレームワークは論理的思考の道しるべ | 本気経営.com

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 こういうフレーズは細分化するほど、そのほころびが見えてきます。ロジカルに見えて、要はロジックではなかったのです。情報を過度に集めすぎるより、個別の事例から丁寧にロジックを組み直し、本質を抽出することが大切でしょう。雲雨傘のケースで言えば、傘から逆算し、「なぜ思考」で突き詰めていくのがよいと思います。たとえば、傘はきっと手元にあったのでしょう。その傘を持って行くか否かを考えるのに、雨のことを知りたかった。だから空を見た。と、こんな具合だったはずです。空を見るよりは天気予報で確認しようとスマホを手に取る人もいたのでは。雲の色より、公開されているアメダスで、雲の厚みと動きを見てみる手も、今日ではありますね。手元の傘が、もしも大きなジャンプ傘で、雨が降らないリスクもあるとしたら、この際、折りたたみ傘を買ってしまおうと新しい決断が生まれるかもしれません。実は、ここまでくると、人は仮説を立てて、様々な打ち手を検討しているものなのです。

 

本書の対象は「コンサル一年目」という設定なので、内容後半はデスクワークなどの初歩的なことばかりですが、「時間をかけずに大枠を決めていく」という点は参考になります。スピードを上げることの重要性とは、修正がしやすくなる点です。また、瑣末的なことにハマるのを避けることにもなります。ポイントは五つ:

  1. 余計なことをやらない
  2. 大多数(8割)を決定づける要素(2割)に着目する
  3. クライアント(顧客)のニーズにフォーカスする
  4. 仮説検証サイクルを回して、リサーチを効率化する
  5. 最終成果物のイメージを作りながら、取り組む

 

コンサルタントとは、知的かつ優秀な方というイメージがありながら、どこか胡散臭くて、口達者に人を騙すという負のイメージもつきまといます。もちろん、そういう方もいるでしょうが、コンサルの方々が学んでいることは、間違いなく、学ぶ価値の高いものです。特に、安易な結論、際限なき取り組み、まったく上がらない効果、そういった状況に直面している企業の方々は真剣に学ぶ価値があるものでしょう。なぜなら一見、「まどろっこしい」ようなコンサル思考は、実は、時間的にも金銭的にもムダを抑える試みだからです。