マクドナルドはビジネス思考のための良い教材

 

華々しい復活を果たしているマクドナルドですが、誰もが知っているこのチェーン店の事例をもって、ビジネス思考を鍛えてみましょう。常識ですが、客単価に客数を掛けた、その店舗数の分が全体の売上となります。客数の増加を考えるなら、一日三食プラスカフェの時間それぞれにおいて対策を打つはずです。さらに平日と休日のち外でも打ち手は変わるでしょう。もっと言えば、客数を、たまたま来店した「流れ客」と、意思をもった「リピータ」に分けると、異なる対策が必要になります。

 

 

他方、客単価で言えば、セットメニューやクーポン、買いやすいサイドメニュー(100円単価商品)など、選択肢はすでに延々と研究され、ほぼ実現しているようです。最後に、店舗数ですが、一時は3000店舗を越えていたものが、今は約2900店舗。24時間営業店舗やマックカフェの比率を高めています。そもそも人口当たりで見ると、10万人に2~3店舗(京都が最多で3店舗、秋田・鹿児島・島根・岩手で1.5店舗以下)となっていますので、素人的にはまだまだ伸ばせそうな気がします。

 

客数については地道な施策ですが、混雑時の効率改善も見逃せません。マックは立地の良さが特徴です。お昼にはどうしても行列ができてしまいます。これは、待つのを嫌って顧客が他に流れてしまう機会損失でもあります。生産工程はかなり完成しているので、逆に、決済方式の変更や注文時間の短縮など、接客側での改善余地はまだあるはずです。また、少し前の記事ですが、わりと本質を突いているのは、「新メニューで盛り上がるのは一部の人だけ・・・開発費や宣伝費を(ムダに使わずここに)回す・・・電源とWi-Fiがあれば・・・マクドナルドに行く」との指摘。今日でも通じるような提言で、客数はまだ増やせそうです。

 

rocketnews24.com

 

それ以外で言えば、デリバリやテイクアウトで市場開拓。あるいはスタバのようにマック関連商品をコンビニで販売してしまう奇策もあります。では、実際のマックの復活はどのようにもたらされたのでしょうか。サラ・カサノバ社長は、女性である強みを活かし、「母親」を顧客ターゲットにした改善を始めました。知名度と立地はもともと十分なので、毀損したブランドイメージをいかに早く回復させるかが焦点だったはずです。

  1. 品質改善とその伝達
  2. 健康的、美味、廉価のバランス
  3. 不採算の表参道や赤坂見附などからは撤退

 

 

不祥事乗り越え…業績回復したマクドナルド特集|Infoseekニュース

 

https://image.infoseek.rakuten.co.jp/content/news/feature/ope/common/201612/mcdonalds/20161226_02.jpg

 

 

マクドナルド「復活はホンモノ」、それでも今後そびえる巨大な壁 |ビジネス+IT

https://www.sbbit.jp/article/image/34131/580_bit201710121131032903.jpg

 

 

本稿の主題は「売上を上げる」ことでした。原田前社長の時代も、奇跡の業績復活を果たしたわけですが、彼はアメリカの人口・売上比との関連から、日本でも「6,000億円程度までなら、すぐにでも売上げを拡大することができる」とコメントしたそうです。その言葉の通り、全店売上高4,000億円(2004年にCEO就任)から5,400億円まで爆進(2010年をピークに失速)。しかし、売上の伸びがピークになった矢先、2014年に消費期限切れ鶏肉や異物混入などのトラブルが重なり、自滅を招いてしまいました。ここからの再復活は、イメージの回復と収益力の復活でした。つまり、必ずしも売上の追及を目的にしないことだったのです。そんな状況下で、本稿の主題は適切でしょうか。

 

不採算店舗の縮小はかなり進んだようなので、最近、マックの攻勢も目立つようになりました。東洋経済でも次のような紹介がなされています。既存客の来店頻度を上げたり、話題作りの期間限定商品で新規客(ご無沙汰の潜在客)を掘り起こすという狙いがあります。

2017年からは、単価を引き上げる期間限定商品と、定番商品の刷新・値引きを組み合わせる両面作戦に出た。売り上げの7割を占める定番商品を訴求し、来店頻度を上げてもらうという狙いだ。

 

最後に総括ですが、売上増加を狙える可能性や選択肢は十分ありそうです。タイミング的にも、今がまさに適切です。しかし日本は、外食産業における競争が非常に激しく、マックの価格優位性もほとんどありません。ひと通り並べた選択肢の中で、私が着目するのは、マックに空席が目立つ時間帯の最適な商品・サービスを投入することです。都心と郊外ではおそらく異なるでしょう。三食をのぞいた時間帯に着目するとしたら、商品のテコ入れは飲料になると思います。様々なカフェが高額飲料を開発して成功していますので、マックにもやれる余地はあるはずです。特にカフェ以外の「手作り系」です。私案としては、時間帯を限定しての飲料新商品や、Wifi・電源の強化などですね。