答えのないところに答えを見出す推定のチカラ

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」

 

 

最近、「フェルミ推定」にはまっていますが、これと同じ発想で、「地球外文明」の存在する確率を計算する式が、「ドレイクの方程式」として知られています。文明とは、私たちと通信が可能な文明を指します。

 

http://sundai.sakura.ne.jp/getsurei/2015getsurei/Sutou/

2015年度(第50期,50周年記念)月例天文講座:駿台学園天文講座 

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  1. 銀河系で一年に恒星が生まれる率に、
  2. 惑星を持つ恒星の割合を掛け、さらに
  3. 生命が維持できる環境をもつ惑星数が掛けられ、
  4. 実際に生命が育つ割合や、
  5. その生命が知的能力を発達させる割合、
  6. しかも恒星間通信ができる文明となる割合、
  7. その文明が通信を行いえる期間の長さも順次掛けていきます。

 

私たちの銀河系には多ければ4000億個の恒星があると言われています。130億年の歴史の中では毎年30個ほどの恒星が誕生し、その半分の確率で惑星を有したとしましょう。毎年15個の恒星に対して、1個くらいが私たちの太陽系のようだとするなら、15の恒星系のうち4個の惑星(衛星を含む)に生命が誕生しえることとなります。実際にそこで生命が育つ惑星はわずかに1個、また知的生命となる確率を1%、さらに人類のような通信技術まで発展させた生命になる確率も1%、ここまでの確率になってしまうと、恒星150,000個に対してようやく1個の惑星に、通信技術をもった地球のような惑星が誕生するとの結論に至ります。ここで、10万年に一回巨大隕石が落ちて文明が消失すると仮定します。これらを全部掛け合わせると、150の文明となります。この方程式の面白いところは、4000億個の恒星を前提にするのではなく、毎年誕生する恒星の数から計算を始めるところですね。そして最後に、通信可能な文明が継続する期間を掛けることで、同時期に(銀河系内での)地球外文明が存在する可能性として算出することができます。なるほど、です。

 

keisan.casio.jp

 

「日本全国に電柱は何本あるか」。これはたびたびフェルミ推定の事例に出される問いです。日本の面積37万km2の中で、平野面積12万km2、ざっとその2%以下となる「6000km2」に一億人が住んでいるとします。戸建て(約100m2)が多い地区では4軒*4軒の区画の四隅に電柱4本、言い換えると(10m*4)^2=1600m2に電柱4本。この区画が4つ並ぶと電柱は9本、この区画が9つ並ぶと(1600m2=0.0016km2)電柱は16本。日本にはこの区画が約375万区画、単純計算で電柱は375万4751本。つまり区画が十分大きくなると、電柱の数は区画の数と等しくなっていくのです。1軒当たり2人住んでいるとして、1区画16軒は32人、375万区画でちょうど日本の人口と等しくなりますね。つまり住宅地に関しては、電柱375万としましょう。商業区や学校・病因等の施設を住宅地の半分弱として、電柱を少なめに見積もります。住宅地と商業区・各施設で電柱500万本。工業区はもう少し少なめに見て、電柱100万本。農林水産等も面積に比して電柱はあまり多くないと見て電柱50万本。その他送電用の大型電柱も50万本とすれば、すべてを足し合わせて700万本となりました。果たして、この結果は正しいでしょうか。

 

 実は日本の電柱の数は公開されています。合計で3300万本。私の推定は間違いでした。電柱には電力用と通信用があるそうです。では、どこでこんなに差が開いてしまったのか検証してみましょう。まず、模範解答を見てみましょう。国土面積の10%が都市部、90%が農村部と区分けします。都市部が50mごとに電柱1本と仮定すると、38,000km2の都市部に1500万本の電柱があることになります。農村部は90%の面積があるとは言え、宅地・商業・工業施設などで占められるところに電柱があるとすれば、都市部と同じ1500万本かもしれません。こうして二つを合わせれば、3000万本となり、実態にかなり近い数です。私の推計より、かなりラフな推定です。

http://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/img/chi_13_03_01.jpg

 

では、私の推定の誤り部分を確認しておきましょう。日本の可住地面積は約10万km2だそうです。全国土面積の27%にあたります。しかし、農地(13%)、河川・水路(4%)、道路(3%)を除くと、宅地(5%)とその他(8%)は合わせて13%だそうです。これは4.81万km2ですから、「50m(50m2=0.0025km2)に1本という電柱」は、1924万本が必要になります。電柱と言っても、実は電力柱(電力会社)と電信柱(NTT)に分けられます。たまたま、東京都知事・小池氏の「無電柱化政策」の報道にあたって、電力会社の電柱に加え、NTTもその半分の本数が紹介されていました。1924万本に対して、980万本くらいで見積もった場合、両者を合わせて2900万本。まぁ、ざっくり3000万本とすれば、実態にかなり近づくことになりますね。

 

2020年の東京オリンピックパラリンピックの開催決定をきっかけに、電線を地下に埋めて電柱をなくし、景観を良くする計画が検討されていることを受け、総務省の関東管区行政評価局が調べた。今年4月1日現在、東京都内の電柱は、東京電力のものが約72万4000本、NTT東日本のものが約38万6000本で、合わせて約111万本だった。

 

portal.nifty.com

本書によると、どこからアプローチするか、そして参考になる数字(感覚=モデル化)をどう引っ張ってくるかが、地頭の良さを示すのだそうです。フェルミ推定の核心である「どんなに少ない情報でも、仮説を組み立てる力」が問われているのです。そこに追加情報や実態検証を加えていきながら、精度を上げていく。またそこには仮説でありがちな罠(ダブリやモレ)に引っかからない慎重さも求められます。まさに、粒として散らばっている情報や知識を活用するという意味では、面白いトレーニング技法ですね。