新幹線の、ワゴン販売のコーヒーをたくさん売るために

 

本書で、高度な疑似面接を体験してみました。戦略コンサルタントになろうとしたら、次のような問題を、素早くこなさなければならないようです。

 

「新幹線の、ワゴン販売のコーヒーの売上を上げるには」どうすればいいか。5分ほどでアウトプットを出すのだという。相談した人物は、お店の売り子さん。その他仔細は、自身でやりやすいように設定して構わない。さて、こんなロジックを、わずか5分で整理できるものなのでしょうか。

 

 

詳細は本書をご覧いただきたいのですが、私なりのロジックを整理したいと思います。売上を上げたいのに、それがなかなかできない。そこのボトルネックを探してみましょう。2~3時間、乗って降りるだけの新幹線では、リピート購入はほぼ望めません。やはり単純に、声がけを徹底して「客数を増やす」か、「大きなサイズを売って単価を上げる」という手段になるでしょう。売り子の相談と言う限り、コーヒーを改良する手は打てそうにありません。新幹線でよくあるのは、タイミングよく売り子が来てくれないという「売り逃し」です。ゆえに、「車両を回る頻度を上げる」のもひとつの方法です。さらに、他の商品(お菓子や弁当)を買った客に、「割引でついで買いを促す」こともできそうです。もし可能であれば、車内の広告スペースを使って、「宣伝をきっちりしておく」という灯台下暗しのようなテコ入れも必要だと思います。せっかくですから、新幹線に相応しいカップにして、「話題のひとつとして」買ってもらうのはどうでしょう。それに、私の個人的な好み、濃厚なホット牛乳を加えて「カフェオレにアレンジ」する手も加えましょう。ざっとこんなアイデアだけでも7つになります。

  1. 声・音などで、商品を気づかせる
  2. プラスアルファで単価を上げる
  3. 接点を増やして、機会を増やす
  4. 抱き合わせなどを駆使して、お得感で売る
  5. 魅力を伝えるための宣伝を強化する
  6. 包装などを工夫して、特別感を出す
  7. オプションを加えて、バリエーションを創る

 

わずか5分間なので、ここまでですかね。コンサルタントとしての素養を見られているので、これを整理・総括してみてはどうでしょうか。たとえば、こんな感じです。「喫茶店に行った人がコーヒーを注文する確率は、ざっと3割以上はいらっしゃるでしょうか。しかし新幹線の中でコーヒーを頼んでいる人は、見た感じ、一車両あたり5杯くらい。60~70人は座っているであろう客数との比率で言えば、かなり少ないと言えます。長時間座って休憩(移動)するという状況は、「時間待ち」目的の喫茶店に限りなく近いのに、コーヒーを頼んでいない。もちろん缶コーヒーや他の飲料という選択肢を取りうるという現実はありますが、どうせコーヒーを買うなら、ちゃんとドリップしたアツアツのコーヒーを飲みたいと思ってもらうのは難しい話ではありません。売り手にはまだまだやるべきことはあると考えます」とでも締めくくれば、コンサルタントとしての売り込み能力において、いくらかの加点になるのではないでしょうか。

 

結局、私の思考は次のように考えました。そもそものニーズがどんな状態にあるのか。売るためにやるべき手はきちんと出し切っているか。車内の売り子の弱点はどこにあるのか。この三点をざっと考え、組み立てたのが上記ロジックです。ただし、アイデアを並べ、もっともらしい総括をするだけなら、コンサルタントとしての価値はあまり高くないのだと思います。相手を納得させるだけのピースが、もうひとつ足りないのです。なぜなら、普通の人でもアイデアは挙げられるはずだし、皆さんバカではないので、とっくの昔に検討したこともあるはずです。それでもコーヒーの販売は、現時点でいまだ「あの程度」です。それはなぜでしょうか。ここに問題の本質があります。

 

実は、新幹線のコーヒーを、ブランド販売していないことが問題だと考えるのです。ブランドというのは、独自の名前をつけることだけではありません。新幹線だろうが、駅構内だろうが、あるいは駅の外でさえ販売できるようになります。商品情報をはるかに伝えやすくなります。その分、品質の安定さには細心の注意を払わなければなりませんが、売上を本気で増やしたいなら当然の試みです。パッケージは統一され、隙あらば、コーヒーにかけた情熱やこだわりを外に伝えます。不定期なキャンペーンをやったりしながら、コーヒー回数券の販売に真剣に取り組む必要も出てくるでしょう。売り子さんからの相談事項ではありましたが、その売り子さんを説得して、上司に伝えてもらうのもコンサルタントの営業力でしょう。そんなケーススタディとして、本件はなかなか面白いシュミレーションでした。