トヨタ式に学ぶのは、その「態度」

 

 トヨタ方式とは根気よく、現場を教育する手法です。即効性があるとは限らず、マニュアルとも異なるものです。それゆえに、「丸投げ」はダメ、「細かく指示を出す」のもダメなのだそうです。まずは何より、「困っていることを掘り出す」という作業が肝になるのかもしれません。そしてその原因を、繰り返し遡って、本当の原因を探します。もしも、それなしに安易な解決策を繰り出すと、問題はやっぱり何度も噴出し続けてしまうのです。真因に近づけば近づくほど、その解決を考えようとして言われるのは「そんなのできるわけがないだろう」となります。それができた企業はひとつ抜け出し、できなかった企業は没落が始まる。この差は非常に大きいです。

 

 

学ばない人、忙しい人はいつまでも改善できません。トヨタの方々は学べる事例を探し出しては、必ず飛んで行って学ぶのだそうです。ゆえに自分たちのことも開放的にしています。自分たちのことは、ビデオなどで撮影して、「忙しくなっている」みずからを省みるようにしています。「忙しい」のは恥ずべきことなのです。そして改善策は外部に求めず、内部の見直しを優先させるのもトヨタ流です。原価を一割下げるくらいだったら、協力会社に泣いてもらうことになるのでしょうが、半減させるというのがトヨタ流です。これだから、知恵を絞って、自分たちで解決しようとすることになります。トヨタと、そのライバルメーカーとの大きな違いがこの点にこそあるのです。

 

 よく意識改革と言いますが、一番改革をしなくてならないのは幹部層です。部門改革が軌道に乗らないのは、他の部門や会社全体が同じレベルのことをやっていないからです。また部門の個々の改革は、多くの場合、部門をまたいでの協力が必要になります。個別最適は愚の骨頂、どうせやるなら、常に全体最適を優先して考える。それがトヨタ流です。その全体活動に、メンバーの一員として参加してもらう。だからトヨタでは、各自の能力ではなく、個々人の態度が求められます。他人事などという姿勢は、許されないようです。日頃から問題意識を高め、「見て見ぬフリ」を厳禁とし、気づいたら即実行、これらを会社のモットーとする。口で言うほど簡単ではありませんが、日々、この姿勢について問われるところに、教育を主軸とするトヨタ方式のすごさが現れています。

 

トヨタ式の"カイゼン"に潜む3つの大誤解 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online

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トヨタ方式は、「表面をまねるだけでは、うまくいきません」と言われます。また、改善であっても、間違えた改善があるとも言います。現場は混乱し、つむじを曲げる現場長も登場するでしょう。カイゼンの生みの親と言われる大野耐一氏は、「無理をせず、粘り強く」と言うそうです。改善への反発が起こりやすい原因のひとつに、期待通りの効果が出なかったりすることもあります。それゆえに改善は、焦ってあれこれやるより、顧客の近いことろから始めてみればいいでしょう。しかも改善にはゴールがなく、延々と続くものです。むしろ日常活動の一貫だと考えた方がよさそうです。

 

信念の問題だと思いますが、トヨタ式では「ミスはゼロにできる」のだそうです。ミスが出るのは人にムリをさせているからです。つまり「人に優しくない」仕組みであることを問題にしているのです。個々人への注意喚起をしても無意味です。「ある程度の不良は仕方がない」と考えてしまうのも間違いです。誰がやっても簡単でミスのないものづくりを標榜しているトヨタは、改善を通してそのメカニズムを研究し、予防保全の仕組み作りにまで昇華させます。問題を芽のうちに摘んで、組織を進化させていくことが、実は改善で最も大切なことのようです。改善風土という言葉が出て来るのもトヨタならではですね。