日本の中小企業は衰退の途中か
日本の中小企業 - 少子高齢化時代の起業・経営・承継 (中公新書)
- 作者: 関満博
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/12/20
- メディア: 新書
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中小製造業の廃業こそ深刻なのかもしれません。「3K」色の強い鍛造・鋳造・熱処理・メッキといった領域は、もともと都心部周辺に存在しました。たとえば、東京モノレールの昭和島駅には、羽田鉄工団地が広がっています。そこには鍛造工場が50もあったそうです。しかし、2017年現在にはわずか数工場になってしまいました。かつては「京浜周りに行けば、何でも作れる」と言われました。東京の大田区から川崎にかけてのエリアでは、高度に専門化された基盤技術部門が濃密に集積していたのです。
機械金属工業に限らず、戦後70年を積み上げた日本では多くの事業分野が成熟し、繊維・日用品などの部門では中国・アジアへの生産移管が著しく、97%にもなりました。海外移転の前には、大都市から日本各地へと工場が移転していました(1960~70年)が、その大半は撤退となってしまったようです。日本国内で生き残るには、日本でしかできないような仕組みを入れなければならない時代になりました。
他方、日本の起業が比較的盛んな分野もあります。ひとつは、大学発ベンチャーで、ソフトウェアやゲームを手がける会社です。次に意外なところですが、農業や水産業。農業人口の数が減りに減って(1500万人→480万人)、水産物でも「フレッシュ」をキーワードに新しいニーズが盛り上がりつつあります。食という基本ニーズは、すべてが海外に行ってしまうわけではないので、まだまだこれから創業ブームが広がる可能性すらあると思います。
創業・廃業の話題ばかりになるが、中小企業と言えば、一番の課題は「事業承継」です。後継者が決まっているのはわずかに4割。やっぱり親族であるのが3分の2。社員からの昇格は、「個人保証」を求められる可能性もあって、嫌がられることが少なくないでしょう。またM&Aの道もありますが、特定の技術者に依存している会社もあり、売却可能な会社として考えてもらいにくい事情もあるようです。そう考えると、総括的には「第三者承継」をスムーズに活かせるための新しい選択肢を産み出していかざるをえないように思います。
2025年には6割以上の中小企業で経営者が70歳を超えるとされます。このうち後継者が決まっていない企業は127万社(日本経済新聞:2017年10月30日)です。もしこのまま決まらなければ、休業・廃業・解散となるわけですが、その実、半分くらいが黒字のままで幕を閉じるというのも残念な話です。そこで失われるのは経営者ばかりでなく、社員たちであり、日本の産業基盤を損なう状況だとも言えます。個人的には以下三つの懸念事項に関心を寄せています。今の中小企業を守ることではなく、むしろ、流動性を高めることで、その資源の存続を図れないかというものです。
- 中小企業が抱える設備や人材の円滑な流動化を図れないか
- 企業そのものの、経営権の合併・再編・売却が図れないか
- 資金・資本がもっと回りやすくなる仕組みの変えられないか
以下、本書で取り上げられている一部企業の一覧です。
製品紹介 | 研削加工のパイオニア 有限会社 アルフ ALF 公式サイト
函館魚市場の鮮魚 | 食材探検隊 | 繁盛店の扉 | サッポロビール
第一金属工業は、中国広州市の「花都汽車城で最も成功した日系中小企業」と言われる。プレス加工を手がける。本社は川崎市幸区。