民法が変わると言うけど、民法って何?

民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)

民法改正: 契約のルールが百年ぶりに変わる (ちくま新書)

 

 

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企業や消費者の契約ルールを定める債権関係規定(債権法)に関する改正民法が成立しました(2017年5月26日)。この民法が定められたのは1898年のことなので、約120年ぶりに民法が大きく改正されることになります。債権部分を抜本的に見直すものでした。インターネット取引の普及など時代の変化に対応し、消費者保護も重視されました。改正項目は約200にもなり、公布から3年以内に施行されます。様々なメディアでも特集で取り上げられていますので、改正に関する詳細はそちらを参考にされるといいでしょう。

 

 

 

特集:ビジネスが変わる民法改正 2017年7月11日 - 週刊エコノミスト

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改正民法&改正個人情報保護法 | 民法大改正&個人情報保護法 | 週刊東洋経済プラス | 経済メディアのプラス価値

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【新連載】100年ぶりに改正される「民法」はビジネスとどう関連している? | ビジネスでつまずく前に読む「民法」の基礎知識 | ダイヤモンド・オンライン

この民法が、100年のときを経て改正されることになりました。改正理由のひとつとして、IT社会の進展に伴い契約のあり方そのものに大きな変化が生じてきたことです。民法は(平たく言えば)人と人との間のルールです。たとえば、皆さんが書店で本を買って、本の落丁があったとします。このとき、皆さんが書店に「本を取り替えろ」ということの根拠が、民法にあります。

 

民法には三つの原則があると言われます。

  • 権利能力平等の原則
  • 私的自治の原則
  • 所有権絶対の原則

「私的自治」とは馴染みのない言葉ですが、これは、私人間の法律関係(=権利義務の関係)が生じた場合、その一切を個人の自主的決定に任せ、国家は干渉しないというものです(ただし、公共の福祉の制約の下)。法律とは権利と義務を定めるものですから、たとえば「売主と買主」「貸主や借主」「物の所有者や担保権者」「親と子」などの各個人間の取り決めに対して、基本となる考え方を提供している法律です。もう少し抽象的に言うと、民法が対象とする現実はある種の「取引」と想定されており、これをすべて権利と義務という用語で表現しつくす、そんな大胆な試みです。民法は、総則の後、物権・債権・親族・相続という合計五つの編で構成されています。物権はいわゆる所有権のこと、債権とは乱暴に言えば請求権です。親族とは血族・姻族を指し、相続とは権利義務の承継を意味します。いずれにしても民法は、条文数が膨大になっていますが、これは人と人との間の歴史的な争いを法律という形にしてきたことによるものなのです。

 

そもそも民法とは、六法(憲法民法・刑法・商法・民事訴訟法・治罪法=刑事訴訟法)のうちのひとつで、国の根幹を定めている法典です。今日では六法の領域におさまりきらない経済法・社会法・税法・行政法などの新しい法律も数多く誕生しています。さて日本の民法の特徴ですが、明治期の不平等条約改正の目的で作成され、わずか三年前後で仕上げたと言われています。条文の多くはフランスに由来しているそうですが、時間の関係上、半分ほどの条文は落とし、文章も簡潔にしてしまったとか。その後、ドイツの法理論を参考に、膨大な解釈論の体系が出来上がり、条文のないところに精緻な解釈が含まれてしまうという、異様な状態が生じました。したがって裁判では、その判断基準に条文が用いられず、解釈論を前提にして判決をくだされてしまうことがあります。しかし、その分かりにくく不透明な民法は、当時の政府の急ピッチでの専門家養成で乗り切ることとなりました。また日本では、紛争の多くを裁判外で処理するという慣習も出来上がりました。こうして「日本人の裁判嫌い」という特質が形成されていくのです。

 

最後に、民法改正にあたっては次のような視点が求められます。一つ目は「わかりやすさ」です。税法のように、厳密さを求められるものはやむを得ませんが、消費者保護法のような条文は表現や構成いずれにおいても、消費者が読みやすいものでなければなりません。また確立した判例を明文化することも不可欠です。二つ目は「現代化」です。時効や法定利率、そして約款やサービス契約など、実は民法制定当時には考慮されてなかった問題が多々発生しています。自然災害(地震津波原発事故等)があった場合のことも想定されていません。特に約款に関わる部分が改正されれば、将来のある判決で自社の約款が不当だと判断され、突然無効になってしまうリスクも生じかねません。さらに三つ目は「国際標準」です。法体系のグローバル化はもはや避けられません。国際取引において適用される法律は、日本も加盟した(2009年~)ウィーン売買契約です。加盟が20年も遅れたそうですが、その契約下での判決や仲裁判断が出た事例は2675件(2011年8月)、先例作りで日本は完全に先を越されました。実はこの先例はトップのドイツはに続いて、中国が二番手につけています。ここでも日本のプレゼンスは皆無に等しい状況になってしまいました。民法改正を、他人事のように考えているビジネスマンがいるのだとしたら、それは大きな間違いなのです。

 

120年ぶりに改正 民法ってどんな法律?|働き方・学び方|NIKKEI STYLE

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