「クォーツ革命」とは何だったのか【連載】

装身具として始まった腕時計の前身、当初は古代の人々の身を飾るブレスレットでした。19世紀に至ると、手の平サイズにまで小さくなった時計(ポケットウォッチ)を腕にしてみようとする試みが始まりました。これが腕時計の始まりです。

 

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二つの世界大戦を通して、腕時計は一気に世界中へと広まります。まず、各社がそれぞれの部品製造に特化する分業形態によって、スイスの生産量を伸ばしました。その後、大量生産方式を確立したアメリカが猛追してきました。さらに、戦後の荒廃から蘇った日本が時計製造でも台頭するようになります。工業製品の供給がグローバルになりつつあった世界で、どの国が覇権を握るか、混沌としていた時代です。その、三国間の争いの中で、あるひとつの技術に注目が集まりました。

 

序文

時計と時間についてのお話:連載にあたっての序文 - 夜明け前の…

第1回

腕時計は、「やっぱりスイス」なのか【連載】 - 夜明け前の…

(略)

第17回

産業革命と時計業界との関わりが深かった【連載】 - 夜明け前の…

第18回

博打と近代戦争が腕時計の進化を加速させた【連載】 - 夜明け前の…

 

 

それがクォーツです。水晶の圧電効果を利用したもので、電気をかけると毎秒3万回以上も振動しました。一般的には、この振動数が大きいほど時刻を正確に測ることができます。しかし、当時はまだ、1メートルを越える家具ほどの大きさの装置でした。クォーツを腕時計にしようという着想は、まさにここからスタートしたのです。

 

 

http://ffden-2.phys.uaf.edu/211_fall2010.web.dir/Justin_Cannon_WEBPROJECT/style/quartzmechanism.gif

 

クオーツ時計の構造・仕組み//高級腕時計・アンンティーク時計/セイコークオーツ[キューブ ボックス]

http://www.asahi-net.or.jp/~fz7t-szk/quartz_move-03.jpg

 

1970年代、ついに日本勢の開発したクォーツ式時計が世界を席巻し始めました。難題だった小型化、省電化、耐震化をいち早く克服した結果です。この頃、アメリカはすでにこの競争から脱落し、スイス勢も大打撃を受けました。スイスでは、徹底した水平分業を強みにしていましたが、強力なトップダウンの決断がなく、多くの工場を破産に追い込んでしまったのです。

 

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クォーツの登場が「革命」と言われる理由は主に二つです。ひとつは、時計の技術革新という精度競争を終わらせたこと。従来の時計メーカーはムーブメントの開発に相当な精力と資金をつぎこんでいました。今後は、精度ではなく、装身具やインテリアとしての時計の魅力を追究することができます。もうひとつは、時計の製造を簡素化させたこと。ムーブメーカーと完成時計メーカーという明確な分業が世界中に広まり、ヨーロッパのみならず、香港でも時計が作れるようになりました。世界の時計製造の中心はこうして中国に移っていきます。業界の構図を根底から刷新し、今日につながる三極構造(ス日中)を確立させたことでも、「革命」と呼ぶにふさわしい出来事だったと言えます。

 

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次回(未)