時計はなぜ正確なのか(調速機・脱進機の役割)【連載】

第5回:

時計が時計であるには、時間を正確に測定できなければなりません。時計とは簡単に言えば、変化するものを数えて時間を測る機械・機構のことです。たとえば、砂時計。砂が定量ずつ落ちる容器があれば、砂が落ちた量をもって時間を測れます。大切なのは、砂の落ちる量を一定のリズムにすることです。これがいわゆる時計の精度にあたります。

 

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機械式時計は、その仕組みに「振り子」を活用しました。振り子は、左右に振れている時間が、振りの大小に関わらず一致するという原理を有します。あの著名なイタリアの科学者:ガリレオ・ガリレイが発見しました。若かりし頃の彼は、天井からぶら下がっているランプが、左右に揺れているのを見て気付いたと言われています。

 

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ガリレオは、教会内の揺れるランプを見て、振り子の等時性原理を発見したと言われています。

 

 

序文

時計と時間についてのお話:連載にあたっての序文 - 夜明け前の…

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 第4回

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ガリレオの振り子時計|手作りの世界史実物教材 : 時計の「必学」雑学 100選 - NAVER まとめ

http://www.geocities.jp/hhoottccaakkee/photo-PendulumClock0.gif

 

 

では、なぜ時計は正確な時を刻めるのでしょうか。その秘密は、この振り子の等時性という原理を採用したからです。クォーツ式時計の仕組みを見てみましょう。水晶(クォーツ)は、電圧を加えると振動するという性質をもっています。これに振り子の役割を担わせているのがクォーツ式時計です。水晶の振動を利用してモーターを動かし、輪列機構を回すことになります。つまり、振動するもの(振り子)と、駆動するもの(モーター)の二つが一定のリズムで時計を動かすのです。他方、機械式時計はどうでしょうか。その本質はクォーツ式と同じです。振動するものは、テンプという部品です。駆動するものは、ゼンマイバネという動力源を内に入れて回る香箱車です。ただし、機械式とクォーツ式とが異なる点もあります。それは、機械式が、回ろうとする歯車をテンプによって間欠的に止めるという点です。テンプは常に振りながら一定のリズムを生み出すので、調速機と呼ばれます。その振り(=往復運動)を、一方向への進みと停止の間欠運動に変えるものが脱進機です。具体的にはガンギ車とアンクルという部品の組み合わせになります。このような機械式と、クォーツ式とは、仕組みこそ異なりますが、時間の流れを分割する(=刻む)機構という点では同じなのです。

 

 

Physics of Time Keeping-Mechanical Clocks

http://ffden-2.phys.uaf.edu/211_fall2010.web.dir/Justin_Cannon_WEBPROJECT/style/quartzmechanism.gif

 

 

まとめとして、時計が正確に動くためには、理論上、正確な間隔で時を刻める仕組みの信頼性が必要です。ただし、無視できない要素が実はもうひとつあります。それは、歯車の集合している輪列機構です。駆動力の伝達先、輪列にある歯車のすべてを、ロスなく円滑に回してこそ、それぞれの車につく針を、設計通りに動かせるのです。良い時計とは、輪列まで含めた時を刻む仕組みについて、究極的に追究した製品だと言えるでしょう。

 

 

次回

時計はなぜ時間を伝えられるのか(文字盤や針)【連載】 - 夜明け前の…