中国、優秀な外交官はどう語る?

外交というのは、いつも勝ち負けで語られる。オリンピックの試合と勘違いしているかのように、メディアもそれを論じる。日清戦争の後、三国干渉があって、一番いやらしかったのは直接権益のぶつかったロシアだった。だから、当時の国民は一斉に怒った。メディアはそれを煽った。明治政府もそれに後押しされるかのように、戦争へと突っ走っていった。伊藤博文のように、戦争に躊躇し続けた政治家もいたが、世論の後押しを得たその他大勢の政治家は、勇ましい言葉を綴り、ついには何十万という命が、大陸で散らされることになる。その戦後交渉を任された小村寿太郎は出発に際して、こうも言われている。

あの万歳が、帰国の時に馬鹿野郎の罵声ぐらいですめばいい方でしょう。おそらく短銃で射たれるか、爆裂弾を投げつけられるにちがいありません

 

 

 

ポーツマスの旗 外相・小村寿太郎の名言|小説の名言|名言、集めました

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日本にも優秀な人たちがいる。何を以って「優秀」と語るか。世界とともに仲良くやっていくために、たとえ利害がぶつかる問題でも粘り強くやってくれている人たちだ。しかし、彼らは目立たない。銃をとって、戦争を仕掛けた人は、ヒーロー扱いされるかもしれないが、和平を唱え、相手にしがみついての交渉をやっている人は、時に「弱腰」とみられる。今の、日中・日韓の交渉でもそうだ。心ないメディアが圧倒的で、何も知らない国民、特にネット右翼と呼ばれる人たちはまったくもって無責任な言論で、毒を広めている。

 

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中国の側に立ったときも同じことが言える。ある外交官、もう引退した方だが、彼が、若い人々との交流番組に立って、熱く語る。何を語ってくれるか、それは平和な時代の外交や、国際化のあるべき姿を語る。特に印象的だったのは日本のことを語ったときだった。

 

尖閣問題は、確かに日本政府のやり方はまずかった。我々(中国人)も腹がたった。でも、そのひとつのことをもって、日本のすべてが悪いと言えるのか。言えないですよ。国交成立時に、日本が拠出してくれた資金は、本当に、当時の中国を助けてくれた。90年代、西洋各国の経済制裁があったときも、最初にそれを解いてくれたのは日本だった。

 

時に、不合理に「熱く」なってしまう若者たちに、平和外交の意味を熱く語る。このような外交官に支えられて、私たちは国際問題をひとつひとつ解決していく。価値観や立場が違うそれぞれの国がぶつかりあう国際外交の場面で、一方的な主張を世界にばらまくだけの外交が成り立つわけがない。テレビ番組のコメンテータの安っぽいコメントに比べたら、見えないところで粘り外交を続ける人たちの努力こそが、今日の私たちの生活を下支えしているのだと、あらためて認識しておいた方がいい。

 

先ほどの外交官は語る。鄧小平以降の中国は、時代が変わったことを理解し、それに沿った文脈でやっている、と。武力では何も解決しない。その言葉が、今の中国政府でも通じる基本概念であることを信じて、みずからの戒めともしておきたい。