和牛に見る「鎖国」戦略の限界

和牛と国産牛とが違うと聞かされて、最初は何のことか分からなかった。

 

和牛と国産牛の違い|全日本あか毛和牛協会

日本で販売されている牛肉は、「和牛」「国産牛」「輸入牛」に分類することができます。2010年度の日本における牛肉の生産量は、和牛155,485トン、国産牛202,240トン(ともに子牛は含まず)で、国産牛は和牛を大きく上回る量が生産されています。

 

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「和牛」と「国産牛」の違い

「和牛」は日本の在来種をもとに、交配を繰り返して改良されたもの。一方「国産牛」は一定期間(輸入されてから3ヵ月間)以上日本国内で飼育されていればいい

神戸牛や松坂牛などの「銘柄和牛」は、さらに細かく要件が定められている。さらに、「和牛」と表示できる牛は4種類の限られた品種とその交配種で、日本国内で出生し生育されたものに限られている。

 

 

しかし、この日本が誇る高級食材が危機にさらされているという。

 NHK福岡放送局|ガチアジア | 番組紹介

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 価格の安い「WAGYU」が、日本から持ち出された和牛の遺伝子をもとに、オーストラリアなどで生産され、世界への供給がなされているのだ。

 

 

日経スペシャル ガイアの夜明け : テレビ東京

「"和牛(WAGYU)"... その知られざる真相」の回では、和牛遺伝子を流出させた人物のコメントが紹介されている。要約すると、日本の畜産は外国の技術にも助けられていた。いいモノは海外にも出す。日本人でさえ高くて食えない和牛を、世界の人にも(もちろん日本の人も含め)それなりの価格で食べてもらいたい。これが百姓(=生産者)の天命でなければならない、と。売国奴とののしる視野の狭い人間たちには、耳の痛い一言だったろう。

 

 

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そうは言っても、和牛の本家も負けてはいられないだろう。その第一歩が、日本の事業者で統一の和牛ブランドを創るという試み。村社会の論理で、技術(DNA)流出を責めたところで意味がない。ぜひ、事業者の皆さんには、これからが競争の本番だと思って、頑張ってもらいたい。

 

 

NHKスペシャル メイド゛・イン・ジャパン逆襲のシナリオ

NHKスペシャル メイド゛・イン・ジャパン逆襲のシナリオ

 

 技術流出と言えば、NHKで放送された「メイド・イン・ジャパン」でも話題に挙がったのが、中国や韓国の企業に技術移転を進める日本人たち。彼らも同様に、売国奴呼ばわりされがちだ。しかし、そもそも彼らが日本企業を辞めるときの事情は様々で、中には、日本の企業が十分に評価しなかったことに恨みを抱いて辞めた技術者もいたはずだ。彼らを結果的に辞めさせておいて、後で売国奴呼ばわりするのは、 筋違いもいいところだろう。人が移動する今日の時代、技術流出はもはや止められない。

 

世界の先進企業間では、特にIT関連においては、人の流出入が当たり前だ。それなりのルールも作られ始めている。村社会の「鎖国」的ルールを掲げて、ジリ貧になるよりは、攻め手に売って出ることが大切だろう。

 

輸入されたオーストラリア産「Wagyu」で生計を立てている日本人は少なくない。また、国内の和牛事業者にとっても、偽物和牛(と言っては語弊があるが。。。)で世界中に宣伝された効果は、過小評価できないはずだ。私たちはあらためて肝に命じたい。ビジネスの世界は、攻撃こそ最大の防御であることを。