世界情勢の読み方:グローバリゼーションの視点から。
非常に骨太のテーマで、かつ膨大な情報や知識を整理してくれている本書。だが、読みにくいこと、この上ない。そんな文句を言いつつも、全部読み通して、現代がいかに成り立っているかをあらためて学ぶことができました。細かく見ると、読み解けない変化が、大きな歴史の枠組みの中で見ると、すっきりしたりします。たとえば、オバマからトランプにかけての米国ですが、一見「何が何だか分からない」状態です。しかし、世界的なグローバリゼーションがその修正期に入っているという文脈の中で眺めると、極めて単純な構図でした。
そもそも、「グローバリゼーション」とはこれまで三度あったようです。記憶に新しい三度目は、英・サッチャー首相、米・レーガン大統領の頃に始まります。英米が自国の利益のために推進した強気の政策は、国内問題で内向きだった両国を大きく変え、最後には冷戦構造を瓦解させるまでに至りました。そんな英米が40年の時を経て、「ブレクジット」や「トランプ」を生み出し、路線変更を強烈に印象づけました。
コラム:英EU離脱、新自由主義時代の終焉か=河野龍太郎氏 | ロイター
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進化し続ける「ヒートテック」
本書にて、「すごい技術」を紹介するのは、わずかに数ページを割けばすみますが、その原理を発見・発明するまでには膨大な時間と労力がかかります。中には、それに一生を捧げた人もいたはずです。今日、私たちが目にすることのできる、あらゆる人工物はそうした技術から成り立っているのです。それゆえに、本書の作者が、何を選んだかというのに、逆に興味がわきました。最も分かりやすい技術としては、ユニクロの「ヒートテック」でしょう。東レと共同開発した大ヒット商品です。
簡単に言えば、「ヒートテック」は主に、レーヨンで発熱し、アクリルで保温することによって、肌着などの生地を暖かくしている機能性衣料です。その外側にはポリエステルが配されていて、吸い取った汗を外に運んで蒸発されています。三層構造なのです。
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スーパー素材の「ゴアテックス」は万能ではない。その技術を知って、使いこなそう
ゴアテックス。その名前を聞いたことがあるでしょうか。「濡れない」「漏れない」という相矛盾する性質を備える素材のことです。簡単に言えば、この素材には無数の孔(あな)があり、液体の水は通さないが、気体の水(水蒸気)は通します。なぜなら、分子レベルで見た時の水は、クラスター(結合体)を形成しており、水蒸気よりはるかに大きい塊になっているからです。
ゴアテックスと独自構造で雨やムレに強く快適に履けるリーガルの春夏の新作シューズ|@DIME アットダイム
この素材は、「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」というポリマーに関係しています。その可能性を信じ、デュポン社を退社した二人が研究を続けていました。そして彼らの息子がそれを引き受け、「延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)」を発明。こうして今日のゴアテックスが誕生するのです。
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首都圏の主要路線に見る、東京の拡張性(後編)
前編最後にも触れましたが、東急線のブランド戦略は突出しています。関西の沿線開発で生まれたビジネスモデル(阪急・小林一三)。これを、あの渋沢栄一がバックに立った五島慶太が首都圏に導入しました。そして次々と鉄道企業を買収し、終戦間際には「大東急」という大勢力を築くに至りました。戦後「大東急」は解体されましたが、これに対抗しよとしたのが、不動産業者の鉄道参入でした。それが堤一家の率いた西武グループです。田園都市に習った沿線開発の乗り出し、しかも箱根での小田急との激突は、箱根山戦争と呼ばれる激しいものでした。
日本が経済成長からバブルに向かうなか、堤兄弟それぞれの企業グループは目覚ましい発展を遂げる。清二氏の西武百貨店など流通部門は、70年に義明氏がトップとなった西武グループ本体から独立。ファッション専門店を集めた「パルコ」は新しい消費文化を創出し、ホテル、不動産開発など100社以上を傘下に持つセゾングループに成長していく。
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首都圏の主要路線に見る、東京の拡張性(前編)
首都圏には「主要」と呼ばれる路線が「19」あるそうです。行政区分としての、いわゆる首都圏とは、関東地方1都6県(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)と山梨県を含む地域にあたりますが、ここでは、東京都心部に通うための鉄道がある地域、それを首都圏鉄道路線の沿線だとしましょう。そこで本書では、その路線ごとに、発展性がずいぶん異なることを取り上げて、格差と表現しているようです。
首都圏とはどこ?関東地方との違いは?山梨は含まれるの? | 違いはねっと
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何かと風評被害の多い「薬」という存在
「毒と薬は紙一重」。
この言葉から、薬を理解する旅は始まります。そう言えば、「毒にも薬にもならない」なんて諺を聞いたことがあります。つまり、毒と薬とは本質的には同一のもので、プラスの作用があれば「薬」、マイナスであれば「毒」というだけのことなのです。
あんなわずかな量の薬は、口に入れると、まず小腸から吸収され、肝臓での解毒作用を経て、体全身に送り届けられます。それゆえに時間もかかり、濃度も当然薄まってしまいます。他方、注射薬は、静脈に打って全身をめぐるが、時間は早い。さらに貼り薬は、吸収速度を調整しやすいため、持続効果が長く続く。このように、投与方法の違いによって、効果の現れも違ってくるのです。
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